<イップスって何?(13)>

無意識のメンタルトレーニングを体験しました。イップス研究所の河野昭典所長(59)によるイップス克服法の1つです。私はリクライニングソファに寝た状態になり、河野所長の話を聞きました。

「20段の階段を1段ずつ下りていきます。ゆっくり… ひとっつずつ… 19、18… 1段ずつ下りていくごとに体の力が抜けていきます。10、9、8… これを下りきったら体の力がすっかり抜けて、本来持つ力が出せるようになります。…3、2、1」

次は広い廊下の先にあるエレベーターに乗り、20階から1階まで降りるイメージをしました。さらに「目の周辺」「あご」「肩」「おなか」といった部分を順番に意識を集中させ、そこをリラックスさせるように言われました。不思議なもので次第に体の力が抜けていきました。

河野所長の言葉が途切れ、スピーカーから流れる「ボーン」「ボーン」という音だけが耳に入ってきました。そのまま数分間が過ぎました。そして再び河野所長の声が聞こえました。

「体の力がすっかり抜け、本来の力が出せるようになります。本来の、自然な動きができるようになります。イメージ通りのフォームで投げられます。どんな時も、どんな場面でも、どんなに緊張する場面でも…」。そして合図とともに目を開けました。【飯島智則】