<イップスって何?(14)>

私が目を開けると、イップス研究所の河野昭典所長(59)はカーテンを開けながら話し掛けてきました。イップス克服法の1つ、無意識のメンタルトレーニングの体験が終わりました。

「何分間ぐらいやっていたと思いますか?」。私は20分ほどに感じました。「いや45分間ですよ」。時計を見ると確かにそうです。眠ってしまったのでしょうか。「眠っている状態と起きている状態の中間ぐらいですね。少し眠りに落ちた時間帯はあったかもしれません」。最後に「本来の力が出せるようになる」という言葉がありました。

「無意識への暗示です。リラックスした状態で、気に病んでいる部分を解きほぐしていきます。今回は体験なので、野球と仮定して語りかけました。本来はカウンセリングなどで状態を把握し、本人に適した言葉をかけます」

いわゆる医療催眠の一種といっていいでしょう。あくまで体験した私個人の感想ですが、かなりリラックスした状態になったことは間違いありません。

「この過程を省いて、いきなり技術指導をしてもイップスの症状は改善されません。イップスは無意識の誤作動ですから。この後に技術の指導をすると、目に見えて効果が出ます」。これが、イップス先生と呼ばれる河野所長のやり方です。【飯島智則】