<イップスって何?(16)>
野球の送球イップスに悩む選手に対し、イップス研究所の河野昭典所長(60)はどんな指導をするのでしょうか。カウンセリングや無意識のメンタルトレーニングを終えた後で、技術の指導に入っていきます。
取材日に指導を受けたのは、左腕投手の荻野佑眞さん(22)でした。日大三で甲子園、日体大では日本一も経験しました。荒川シニア時代は広島鈴木誠也外野手の1学年下で、彼に次ぐ投手として活躍していました。大学では外野手に転向しましたが、今春から社会人野球で再び投手に挑戦しています。
「高校時代に投球で『おかしいな』と思うことはありました。内角に投げるのが怖かった。『先輩にぶつけちゃいけない』と思って腕が振れなくなったんです」。高校時代は乗り切ったが、大学で違和感が強くなったそうです。「1年春のキャンプに参加したら、ボールが指から離れない。打撃投手で先輩に死球を2個当てたり、左打者の頭上に投げてしまいました。先輩たちは優しくて何も言われなかったんですけど、自分のショックが大きかった。『やばいぞ』と思って、投球への不安や恐怖心が出てしまいました」
最初は誰にも相談できなかったそうです。インターネットでイップスばかりを検索するなど、悩む日々が続きました。そこでイップス研究所を見つけました。【飯島智則】