<イップスって何?(21)>
イップスを未然に防ぐため、どんな指導をすればいいのでしょうか。イップス研究所の河野昭典所長(60)の話を続けます。
「ルーティンには落とし穴があります。自分に適した動作の繰り返しなら能力を発揮します。しかし、合わない動作を続けていたら…そこからおかしくなってしまいます。ケガも多くなります。人間は体も考え方も個々に違う。指導者の考えや好みを押しつけてはいけないんです」
多くの指導者は、選手に良かれと思って助言しています。また、現実的に野球の専門家ばかりに指導は受けられません。少年野球では、父親がコーチを務めるチームも多くあります。イップスを恐れると、指導できなくなってしまいます。
「指導はいいと思います。要するに、きちんと説明してあげればいいんです。『こうやれ ! 』と怒鳴るのではなく、例えば『今のフォームだと肘を痛めてしまうから、こう直していこう』と説明して理解させる。私は小学生でも選手の意見を聞きます。『君はどう思う?』と。子供なりに意見を持っています。それを無視して強制するから、無意識の領域がおかしくなる。つまり脳内に神経のブロックが起こり、イップスの症状が出てしまうのです」
指導者への指導は、河野所長も大きな課題と考えています。【飯島智則】