<イップスって何?(27)>

イップスは治りますか? そう問うと、イップス研究所の河野昭典所長(60)はニッコリ笑いました。

「私は『治る』と言いません。克服するんです。『治る』では、それまでの人生や頑張ってきたことの否定になる。意味があってイップスのサインが出ているのですから、それを受け入れ、何かに気付き、乗り越えていくことが大切です。必ず克服できます。イップスで競技をあきらめないでほしい」

この連載の第3回で、イチロー選手の言葉を紹介しました。テレビ朝日系「報道ステーション」のインタビューでイップス経験を告白した際、いかに克服したかを問われ「センスです。これは努力ではどうしようもない。センスです」と答えています。

河野所長は、こう解釈しています。「技術というより、何かに気付く能力…これをイチロー選手は『センス』という言葉で表現したのではないでしょうか。それは、まさにセンスだと思います」。イップス先生と呼ばれる河野所長は、これからもイップスに悩む選手たちを救っていきます。

さて、ここまでイップス指導の専門家に話を聞いてきました。ただ、イップスは現場で…グラウンドで発症します。

ここからは指導の現場からイップスを見ていきましょう。【飯島智則】