私たちはわが子に、「健康的な発育・発達」のために好き嫌いせず、バランスのよい食事をたくさん食べてほしいと思っています。スポーツをする子どもは特に、多くのエネルギーや栄養素が必要ですし、遠征や合宿先では食べ慣れた自分好みの食事ばかりが出ることはないでしょう。一生懸命練習に励んでいる子どもたちがコンデイションを崩さないためには、「どこでも眠れて、何でも食べられる」ことが何よりも大切だといってもいいでしょう。
しかし、それを子どもに伝えることは大変なことです。私も、子どもたちが幼いとき、「この言い方をしても伝わらない」と頭では分かっていても、正論を並べて感情的に伝えてしまい、自己嫌悪に陥っていたものです。「何で分かってくれないかなあ」とモヤモヤしたものです。
変容ステージを見て対応を変える
人が行動を起こし、その行動が習慣になるまでには、いくつかのステージがあるといわれています。人の行動が変わるまでのステージは「変容ステージ」と言われ(Prochaska et,al,1992)、次のような5ステージがあるといいます。
(1)前熟考ステージ(現在行っておらず、今後行うつもりもない)
(2)熟考ステージ(現在行っていないが、今後行うつもりである)
(3)準備ステージ(現在行っているが、定期的ではない)
(4)実行ステージ(現在行っているが、始めたばかりである)
(5)維持ステージ(行い始めてから6か月以上経っている)
これらは、新しい行動を起こすことに対して、どの程度、気持ちの準備ができているかで分類されています。例えば、大人の禁煙や生活習慣の変容を促すための保健指導などにも活用されています。わが子が今どのステージにあるのかによって、対応の仕方を変えていく必要があるということですね。
※このステージを子どもに当てはめる場合、実行ステージから維持ステージに移行するための期間が大人と異なります。大人は6カ月のところ、子どもは2カ月に設定されています。つまり、実行しはじめて2カ月以上続けられたら、しっかりと行動変容が行われ、維持できているとします。
文献:上地広昭・竹中晃二・鈴木英樹「子どもにおける身体活動の行動変容段階と意思決定バランスの関係」教育心理学研究,51,288-297,2003