私は、静岡県内のクラブチームや高校や大学のサッカー、ラグビー、野球、卓球などのチームを対象に「スポーツ栄養サポート」を実施しています。先日、ある大学サッカー部のサポートで、入学したばかりの1年生を対象とした集団セミナーと体組成等の計測会を実施しました。終了後、ある選手からこんな質問を受けました。

GKで俊敏な動きが求められますが、小さい頃から太りやすい体質で食べ方に悩んでいます。長年、食事面では色々試していますが、なかなかうまくいきません。1日で1kg以上、体重が増えることもあるくらい、食べたら食べた分だけ体重が増えてしまうのを恐れています。今回の指導を受けて、どうしていったらいいのか悩んでいます。

大学生になると、カリキュラムによっては高校生までのような規則正しい生活を送ることが難しくなります。親元を離れるなど、生活環境も大きく変化します。この選手は身長の伸びもほぼ止まって、自分なりにカラダを絞りたいと考え、夕食で主食を抜いていました。その分、肉や野菜をたくさん食べている、ということでした。

詳しく食事量や日常の生活を聞きとったところ、食事の「量」としては全く問題ない反面、食事のバランスやとるタイミングや内容に課題がありました。そこで「パフォーマンスを上げるための食事の工夫」を6つ伝えると納得してくれたので、「1カ月後には、必ず俊敏性を感じ、パフォーマンスがアップするのでぜひやってみてね」と励ましました。

パフォーマンス向上のための6つの食事の工夫

その選手に伝えた6つの「パフォーマンスを上げるための食事の工夫」は次の通りです。

6つの「パフォーマンスを上げるための食事の工夫」

(1)食事時間を規則正しく整える

1日3食は欠食しないようにします。特に朝食を食べることは大事。主食だけにならないように、主菜も食べるようにします。タンパク質をとることで体温をぐっと上げ、1日の代謝も上げることになります。また、早食い、ながら食い、まとめ食いをしないようにします。質のいい睡眠をとるためにも、寝る直前には食べないようにしましょう。

(2)主食は抜かずに3食ともとる

主食を抜いて体重を落とそうとする選手がいますが、脂肪を燃やすのにも糖質のエネルギーが使われているので、抜かずに少量でも摂るようにしましょう。また、満足感を得るためにも必要になります。

(3)主菜・副菜は脂質の少ない食材や部位、調理法でとる

野菜やキノコ、海藻類はビタミン、ミネラルもたっぷり含まれています。これらの食材を活用すれば、摂取エネルギーを増やさず、食事量の満足感を高めることができます。

タンパク質の量をキープすることで筋肉量を維持できますが、特に肉類はたくさんとると同時に脂質もとることになります。ここで、脂質が多い、少ない肉や魚の部位や種類を紹介します。

たんぱく質を減らさず、油脂をコントロールする工夫

<肉・魚の脂質>
・牛肉や豚肉=バラ肉は避けて赤みの多い部分を選ぶ
・鶏肉=もも肉や皮の部分に脂質が多いので、むね肉やささみ肉を選ぶ
・魚=マグロやカツオは、トロなどは脂質が多いが、サーモンも多いので食べる量に気をつける
・ネギトロ=マグロに植物性の油脂を練り込んで作っているものが多いので、表示をしっかり見てから購入する
※肉や魚の場合は「脂質の多い部位は白っぽい」を参考にすると簡単ですね。

また、同じ食材でも、調理法によってエネルギー量は変わります。エネルギー量を低く抑えられる「蒸す」「ゆでる」の調理法がおすすめです。

(4)乳製品は「乳脂肪」に気をつける

牛乳やヨーグルトなどの乳製品は、カルシウムやタンパク質が豊富で手軽に食べられるので利用したい食品の1つです。ただし、乳製品は乳脂肪が多いので、減量中の場合は低脂肪のものなどを活用しましょう。

(5)果物

ビタミンやミネラルが豊富な果物をとることは大切ですが、糖質も多いので食べすぎないように気をつけます。1日に、リンゴ小1個分程度の量を目安にしましょう。

(6)見えない油脂や糖分にも気をつける

特に加工品に入っていて見えにくい油脂、カレールー、シチュー、デニッシュパンなどは栄養成分表示を見て確認するなどして、見えない脂質量の意識をしましょう。

今回紹介するレシピは、「生シイタケのクリームチーズみそ焼き」です。生シイタケは、カロリーも低く、カルシウムの吸収を助けるビタミンDや食物繊維も豊富です。ビタミンDは紫外線にあてることによって増えますので、軸をとって2~3時間、日光に当ててから食べるのがオススメです。

シイタケの食感やにおいが苦手だという人もいますが、チーズと一緒だとマスキング効果でにおいが軽減します。チーズはカルシウムも豊富に含みますので、骨強化として相性が良い組み合わせです。

シイタケは日光に当ててから食べるのがオススメ
シイタケは日光に当ててから食べるのがオススメ

全国の生シイタケ(原木栽培)の令和2年の生産量は5395.8トンで、静岡県は日本一の734.3トンでした(※)。原木栽培とは、クヌギやコナラなどの木にシイタケ菌を植え付ける栽培方法のこと。天候など自然条件に左右されやすく栽培が難しい反面、シイタケ本来の香りが強く、肉厚で歯応えがあると言われています。静岡県内では、主に伊豆地域を中心に原木栽培が行われており、私が拠点とする藤枝市も、原木、菌床ともに多く栽培されています。

低カロリーで栄養価の高いシイタケを、ぜひ食卓にとり入れてみてください。

※出典=生シイタケ(原木栽培)生産量(令和2年)「令和2年特用林産基礎資料」農林水産省

静岡スポーツ栄養研究会/管理栄養士・中野ヤスコ