長年、小学生から実業団・プロまで男女問わず、様々な競技やレベルの選手たちと関わってきました。その経験から感じる男女の思考特性についてお話しします。

もちろん個人差が大きく、現在は性別特性を示すことに抵抗がある時代ですが、指導者、保護者はこの違いを知っておくことで、声のかけ方が変わり、効果的な関わり方ができるようになるかもしれません。

どんな時にやる気を感じるか

これまで関わってきた選手たちに「どんな時にやる気を感じるか?」と質問をすると、大方の男子選手は「試合に勝った時、タイムが出た時など『結果が出た時』、また結果が出なかった時に『もっとがんばろう』『一生懸命練習しよう』とモチベーションが高くなる」と答えます。それに対し、女子選手は「指導者や両親、仲間などから励まされたり、認められたりした時にモチベーションが上がる」と答えます。

誰だって勝てばうれしいし、認められるとやる気が出ますが、男子選手は「結果が出た時」、女子選手は「自分に関心を持ってもらったり認められたりした時」に、やる気を感じる比重が大きくなる傾向があります。特に女子選手に対しては、努力そのものを認めることを重視し、周囲の不満が出ないような配慮をする必要がありそうです。

素直に受け入れる女子、コツコツ努力の男子

指導者の言葉を素直に受け入れることができるのも、女子選手の良い特徴です。逆を言えば、厳しい言葉でしかりつけると、男子選手はある程度聞き流せても、女子選手は激しく落ち込むことがあります。また「自分が失敗して負けたらどうしよう」「ケガをしそうで怖い」という恐怖心や不安感も、男子選手より女子選手の方が強いようです。

当然、男子選手にも不安が強い人もいますし、論理的思考でコツコツと目標に向かって努力する女子選手も多くいます。とはいえ、指導者や保護者が、一般的な男女の考え方の違いや思考特性を理解していれば、チームをいいムードにしたり、家庭でやる気を引き出す声かけをしたりすることにつながるのではないでしょうか。

合宿が減り、食トレに励むチームが増加

さて、今年度に入って、本格的に食事トレーニングに取り組むチームが増えています。ここ数年、合宿や遠征などの機会が減り、選手と関わることができる機会がトレーニングの時間だけになってしまい、次のような悩みを指導者が抱えていることも一因にあります。

選手たちの「食事シーンを見ること」ができない
選手同士の刺激もなく、選手の素の様子がわかりにくい
選手同士がトレーニング以外でコミュニケーションをとる機会が減っている

選手への声かけや励まし方に迷ったときは、男女の思考の違いを思い出して欲しいと思います。

高校女子バスケチームでも食トレ実施

先日は島田商高の女子バスケットボール部で食事トレーニングを行いました。今年度から顧問の先生が代わり、「毎月、体組成の測定はしている」「練習後にプロテインを飲んでいる」ものの、食事への意識を一層高めたいということで、選手と保護者が全員参加して熱心に受講してくれました。

島田商の女子バスケ部で食事トレーニングを行う中野さん
島田商の女子バスケ部で食事トレーニングを行う中野さん

選手たちがどのくらい食べているのかを見たい
スポーツマンとして、普段口にする食べ物に関心を持たせたい
体作りをしっかりとしていきたい
夏バテを防止したい
保護者もコーチも巻き込みたい

そこで、以下の内容を提案し、実施しました。

いつも自分が食べるごはんを計量してみる
練習直後に、教材用弁当(女子アスリート向け鉄分強化)と一緒に食べる
ヘモグロビン値測定(簡易貧血検査)を実施する
食材のバランスと量について、フードモデルを活用してイメージしながら、女子アスリートの課題についても交えた栄養セミナーを行う

友だちや保護者と栄養を学ぶ島田商女子バスケ部の選手たち
友だちや保護者と栄養を学ぶ島田商女子バスケ部の選手たち

講義を受けながら選手と保護者が相談する姿も垣間見え、「食はコミュニケーションだなあ」と感じることもできました。

さて、今回のレシピは練習後、食欲がないときでも食べやすい「鉄分たっぷりキムチ鍋スープ」です。私が経営する「くるみキッチンプラス」を利用するアスリートたちからも大変人気のメニューです。

暑くて食欲が減退しがちですが、キムチのピリ辛なスープを一口飲むと食が進むことでしょう。キムチは安価なものでも十分、おいしく食べられます。アサリで鉄が、春雨で糖質が摂れます。

静岡スポーツ栄養研究会/管理栄養士・中野ヤスコ