パワー系の競技では「技術云々よりまず増量」と言われることがよくあります。特に競技を始めたての時期は、まず当たり負けしない体にしなければ、ハードな練習にも耐えられませんよね。

一方で、練習についていくのが精いっぱいで食欲がわかない、たくさん食べても思うように体重が増えないというケースが多いのも現実です。今回はアスリートの増量についてのお話です。

アスリートの増量の考え方

「1カ月で○kg増量を目指しています!」「増量のために揚げ物やご飯をいっぱい食べています」…どちらも競技を始めたばかりで、早く増量したい選手たちからよく聞く言葉です。しかし、ゼロから体を作るこの時期だからこそ、焦って無理に増量するのではなく、目標を立ててじっくりと増量に取り組むことが大切です。

増量するためには、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回るように食事量を増やすことが基本となります。一般的にアスリートの増量というと、「筋肉量を増やす」というイメージを持つと思いますが、実は筋肉だけを増やすことは大変難しいことで、実際には筋肉とともに体脂肪も増えるのが自然です。できる限り体脂肪をつけたくなければ、食事管理に加えてそれなりのトレーニング量を維持することが必要です。

増量計画について

アスリートは増量する前に、次の目標を決めておく必要もあります。

(1)何kg増量したいのか
 体組成計であらかじめ筋肉量や体脂肪量を測っておき、それぞれ目標値を決めましょう。

(2)どのくらいの期間か
 元の体重・体形やそれまでの運動歴、トレーニング計画にもよりますが、1カ月に数kgの増量は望めません。最低でも3カ月程度の期間で0.3~2.0kgを目標とするのがよいでしょう。

(3)食事の目標
 消費エネルギーと摂取エネルギーを算出して、それに見合った食事計画が立てられれば理想的ですが、毎食エネルギー計算をすることが難しい場合は、全体のバランスを意識しましょう。体脂肪をあまり増やさずに増量するには、ビタミンやミネラルをバランスよく摂る必要があります。エネルギー量だけにとらわれず、食事全体をボリュームアップするイメージで、ご飯を少し多く盛りつける、ゆで卵やヨーグルトなどのタンパク源を追加する、小鉢をひとつ増やすなど工夫しましょう。

基本は「栄養バランス」

増量も減量も栄養バランスという点で考え方は同じです。特に成長期のアスリートの極端な増量・減量は体に大変負担をかけるため、本人に任せず周りの大人が適切にサポートすることも大切です。

今回のレシピは、そんな増量期の1品におすすめの「シーフードチャウダー」です。冷凍のシーフードミックスとソーセージ、ニンジン、タマネギ、ジャガイモ、シメジなど具だくさんで食べ応えも満点。粉チーズをかければ、さらにコクがアップします。

食欲がわかないときでも汁物は口にしやすく、一口入れると食欲が増すこともあります。気持ちも落ち着く温かいスープを体づくりにお役立てください。

KAGOSHIMA食×スポーツ/管理栄養士・川口郁子