「食育」は食育基本法において次のように定義されています。
様々な経験を通じて食に関する「知識」と食を「選択する力」を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てるもの。
食に対する関心が高い人は自分で知識を習得したり、それを食選択の行動に移せますが、関心があまり高くない人にとっては、食の知識に触れたり体験を通したりして「関心を持つきっかけ」に出会えるかどうかが、とても重要になります。この春、私が関わった食育体験に参加した人の感想や私が感じたことから、食意識を高める効果的なポイントを紹介していきます。
子どもは「体験」で食意識が変わる
4月末、鹿児島市の観光農園で「農業体験×トレイルランニング」の大会が行われ、子どもから大人まで親子・ペア・チーム・個人で約300組のランナーが参加しました。会場内の自然遊歩道を走り、観光農園で普段から人気がある野菜を収穫し、さらにナンドックを作るという体験を組み合わせた内容です。
私は、スポーツ栄養の観点からリカバリーにおすすめのメニューとして「ナンドック」を監修。レース前にランナーたちに、走った後の疲れた体を回復するための栄養補給の仕方やナンドッグを食べる意味を伝えました。ナンの生地は赤(トマト)・黄(カレー)・緑(小松菜)の3種類を揃え、それぞれ目的や栄養素の特徴から選択できるようにもしました。
●赤(トマト)=疲労回復(抗酸化成分:リコピン・ビタミンC)、ミネラル補給(カリウム)
●黄(カレー)=食欲増進(カレースパイスの香り) 、消化促進(胃腸の働きをサポート)
●緑(小松菜)=疲労回復(抗酸化成分:βカロテン・ビタミンC)、体づくり(鉄、カルシウム)
すると、面白いことに家族で全員異なる色を選択したり、走った後に効果的な食材の生地を選択したり、好きな味を選択したりと、それぞれの関心や好みで選ぶのです。中でも印象的だったのは、ある小学生が「いつもは野菜を食べないから」とあえて小松菜入りの緑色のナンを選択していたこと。いつもと異なる環境でいつもと異なる選択をする姿を見て、このような体験はとても効果があるんだと感じました。
日常と異なる環境で異なる選択
スポーツと食と学びを体験することは、特に子どもにとって印象が強く残ります。自分で食材を選び、作って食べることは、記憶とともに知識の定着にもつながるでしょう。
今回の企画のように「食べること」に少し「学び」を加えれば、知識を習得するきっかけになりますし、スポーツに食の体験を絡めれば、これまでとは違った関心や興味を生み、目的に合わせて栄養素をとるという学びと実践につなげることができます。家庭でもできることはありますが、親子でイベントに参加するなどして、楽しく食育できると良いですね。
今回紹介するレシピは、イベントで参加者が作った「リカバリーナンドック」です。リカバリーのポイントとなる糖質・タンパク質・抗酸化成分が同時に摂取できます。
補食にも使えますし、具を変えれば様々なアレンジもできます。テーマを考えて、自宅での食育としてもぜひ、親子で作ってみてください。