「こうじ(麹、糀)」とは、「ニホンコウジカビ」とも呼ばれ、ご飯やパンが古くなると生えてくる赤や黒、白のカビの仲間です(ただし、ニホンコウジカビは、黄緑色で仲間ではありますが別物)。カビの食文化は世界中にあり、ヨーロッパは乳製品によく使われ、アジアでは穀物の発酵に使われます(※1)。
日本の発酵食品を支える麹
もし、麹がなかったら、しょうゆやみそもなく、今のような日本の食事は成り立ちません。ちなみにしょうゆは、麴菌を麦、蒸した大豆に培養し、その後、塩と水で合わせて数カ月間おいて発酵・熟成させ、それを絞った液体です。みそは、蒸した大豆をつぶし、麹と塩を合わせて、発酵させたものになります。
発酵食品には、様々な健康効果が期待されていますが、その知見に関してはまだ十分ではないと言われています。様々な研究が進んでいる中で、発酵食品に共通する独自微量成分としてグルコシドセラミドという成分があります。日本の発酵食品には独自構造を持つ麹グルコシドセラミドが豊富に含まれること、また、これらが腸内細菌叢の改善効果や肝臓コレステロール減少効果を発揮することを報告する研究発表もありました(※2)。
グルコシドセラミドはマウスの腸管に幼若時に存在すると、その後のアレルギーを抑制することも知られています。食餌のグルコシルセラミドが腸管内で腸内細菌によってセラミドに分解され、機能を発揮している可能性も指摘されており、これらと同様の効果を麹グリコシルセラミドの摂食でも期待されているため、今後の研究に注目です。
麹の「酵素」の力で料理をおいしく
麹は酵素の宝庫とも言われ、たくさんの酵素を生産しますが、その中で、主に発酵醸造に関わる酵素が「アミラーゼ」と「プロテアーゼ」です。
アミラーゼはでんぷん分解酵素で、長い鎖の「でんぷん」を短い「糖」に分解します。「糖」に変わるので、味としては“甘み”が生まれます。プロテアーゼはたんぱく質分解酵素であり、こちらも長い鎖の「たんぱく質」を「ペプチドやアミノ酸」に分解するため、こちらは“うま味”が生まれます。
アミラーゼやプロテアーゼは、ヒトの消化液にも含まれる酵素。つまり、口に入る前から食材の消化を助けてくれるということです。
麹の使い方としては、塩味を加えたい時は「塩麹」、甘みを加えたい時は麹で作った「甘酒」を活用するとよいでしょう。
あらかじめ食品に漬け込むほか、炒め物や汁物の味付けとしても使えます。うま味が加わりお肉も柔らかく仕上がります。カレーや肉じゃがを作る際、お肉を炒める段階で、少し塩麹を加えるとうま味が増し、よりおいしく仕上がります。
今回は、塩麹を使った「豚肉の塩麹ステーキ」を紹介します。味付けはもちろん、麹の力で「うま味」と「柔らかさ」が加わり、いつもの豚肉のステーキをワンランクアップさせてくれるレシピです。
<参考資料>
※1=なかじ(2020) 麹本 一般社団法人 農山漁村文化協会
※2=山本裕貴他 麹に含まれるグリコシルセラミドの健康効果. 生物工学,2019,97(4),182-4.
・発酵食品って何がいいの?|発酵のぎもん|みんなの発酵BLEND (hakko-blend.com)