<取材ノートから ラグビー日本代表・稲垣啓太>

ラグビーW杯日本大会関連 会見で力強い視線のプロップ稲垣啓太 顔写真=2019年10月2日
ラグビーW杯日本大会関連 会見で力強い視線のプロップ稲垣啓太 顔写真=2019年10月2日

暮れゆく2019年。スポーツ界には、さまざまな出来事があった。6月には18歳のサッカー久保建英がRマドリードに移籍し、8月にはゴルフで渋野日向子が全英女子オープンを初制覇した。秋のラグビーW杯日本大会では、日本代表が悲願の8強進出を果たした。各担当記者がこの1年の話題を連載「2019 取材ノートから」と題し、5回にわたって振り返る。第1回は、「笑わない男」ことラグビー日本代表プロップ稲垣啓太(29=パナソニック)の「笑わない美学」を紹介する。

満面の笑みを浮かべる小学生の頃の稲垣啓太(前列左から3番目)
満面の笑みを浮かべる小学生の頃の稲垣啓太(前列左から3番目)

稲垣はW杯で「笑わない美学」を貫いた。1次リーグで優勝候補のアイルランドに勝利しても、8強進出の歴史の扉をこじ開けたスコットランド戦で代表7年目にして初トライを決めても、笑顔を見せなかった。その無表情にちなんだ「笑わない男」は、今年の流行語大賞にノミネートされるほどの人気ぶりだった。

なぜ、笑わないのか-。そこには、プロ意識の高い稲垣流の美学があった。きっかけは、野球に熱中した小学時代。巨人などで活躍した松井秀喜氏に憧れ、全国大会にも出場した強豪で4番捕手を務めた。試合中に笑顔になると監督から「歯を見せるな!!」と口酸っぱく言われた。相手に表情や態度から「隙を見せるな」という意味で注意された。素直な性格の稲垣は、しっかりそれを守った。

少年野球の全国大会に出場した稲垣啓太(左)
少年野球の全国大会に出場した稲垣啓太(左)

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