<ラグビー流 Education(8)>

5大会連続18度目のラグビー全国選手権出場を決めた名門・桐蔭学園(神奈川)を率いる藤原秀之監督(51)と、元日本代表の今泉清氏(52)という“レジェンド”2人が、子育て世代や指導者へメッセージを送ります。今回はスポーツに限らず、人を育てるために鍵となる「目標の設定」についてです。

目標を明確化する

大リーグの大谷翔平選手の活躍に伴い、岩手・花巻東高時代の「目標達成表」というチャートが注目されました。目標を明確化することの重要性。桐蔭学園ラグビー部では「最高目標と最低目標」を設定するという。メンタルコーチの指導もあって、4年前から本格的に習慣化しました。

藤原 個人の目標の最高と最低、チームの目標の最高と最低。年間通してのもの、試合ごとのもの…。年間通じてやっています。

個々がノートに目標を書き、自己採点する。

藤原 基本的にチェックはしません。義務的になってしまうと、形式化に終わってしまうので。

書き方は本人に任せる。自分を自分で確認する。

藤原 そういうことを個人でできるようにするための訓練だと思っています。それがラグビーだけでなく、人生通じてのスキルになってくれればいいと。人生の最高目標と最低目標というのもあるでしょう。

東海大相模との決勝戦を制し、優勝監督インタビューを受ける桐蔭学園・藤原監督(19年11月17日撮影)
東海大相模との決勝戦を制し、優勝監督インタビューを受ける桐蔭学園・藤原監督(19年11月17日撮影)

「最低目標」の1つの目安は「10回やったら10回できること」。

藤原 相手の状況に左右されずにできること。例えば「(指示の)声をしっかり出す」。その基準があれば、1つのプレーで失敗しても、立ち返るところがあるはずです。

例えば、SHが「最高目標はパス成功率100%」を掲げた場合、「(パス動作で)最後までフォロースルーをする」を最低目標としたとします。

藤原 これなら相手に関係なくできる。その選手がそれでパスの正確度が上がると考えるのなら、それでいいと思います。

当然達成度が上がれば、目標も上がり、プレー全体の精度が上がっていく。鍵は目標の具体性。

藤原 最高目標を「1試合に必ず1回はターンオーバー」にした場合。強いタックルが必要で、その前に相手をしっかり見ること、適正なポジショニングも必要です。そう考える中で、「10回やったら10回できること」は何なのか、と。

本人の意識を高めるべく目標や採点のチェックはしないが、一方で目標を「共有」できれば、指導や働きかけの幅が広がる。

藤原 「ここは(目標と)違うんじゃない?」とか「もう1度(基本に)戻ろう」となれる。目標が明確で、1人1人がおのおのの目的を達成してくれればいい。要は自分がチームにどのように貢献できるか。またはラグビープレーヤーとしてなりたい姿を具体的に描いて、近づいてほしい。

チームで1つの目標を掲げることも大事だが、それは個々が目標に到達してこそ、実現するのだろう。

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