<週中ベースボール:若林憲一氏に聞く(1)>

野球で遊ぼう! 都内で「スーパースラッガー野球塾」を運営する若林憲一氏(66)が「子どもに野球をやらせてあげたいが、何をしていいのか分からない」というお父さん、お母さんの疑問に答えてくれました。自身も大洋(現DeNA)で10年間プレー。息子の晃弘内野手(26)は巨人で活躍しています。「打つ、投げる、捕る」の基本動作の大切さを2回に分けてお伝えします。第1回は「打つ」「投げる」をピックアップします。【取材、構成・桑原幹久】

楽しみながら上達させる

無邪気な声が響いた。土曜の夕時。練習場に集まった幼稚園年長クラスの塾生たちは、コーチへ向かって「よろしくお願いします!」とあいさつ。ストレッチを済ませると、グラブを持ち、はしゃぐように打撃練習の守備についた。野球塾代表の若林氏は子どもたちの姿に、野球の底辺拡大への光を口にした。「スポーツをする、というよりも“遊び”の感覚。最終的に野球を続けてくれればいいですし、ファンになってくれればありがたいですね」。ネット越しでわが子を見守るお父さん、お母さんの思いも同じかもしれない。

「スーパースラッガー野球塾」を主宰する若林憲一氏
「スーパースラッガー野球塾」を主宰する若林憲一氏

野球を始めたばかりの子どもが、最初に楽しさを覚えるのが「打つ」ことだという。ポイントは「インパクト」と「トップ」の2つ。プロ野球選手でも打撃フォームは十人十色だが「どんな構えをしてもいいんです。でも、この2つだけは万人に共通するものがあります」と若林氏は説明する。

理想型は「バスター」の動き。バントの構えでインパクト地点を確認。その構えからバットを最も引いた場所が、自然とトップの位置となる。足を上げても上げなくても、バットを最初にどんな位置に置いてもいい。「インパクト」と「トップ」の2点だけを意識させれば、自然と自分の間合い、間隔でスイングができるようになるという。

「スーパースラッガー野球塾」で打撃の指導を受ける幼稚園年長クラスの子どもたち(撮影・桑原幹久)
「スーパースラッガー野球塾」で打撃の指導を受ける幼稚園年長クラスの子どもたち(撮影・桑原幹久)

2つのポイントが分かれば、あとは楽しむだけだ。ケガ防止のために使用しているスポンジボールを打ち返すたびに、練習場に「ナイスバッティング!」「すごいね!」とコーチ、子どもたちから声が飛ぶ。お父さん、お母さんの表情も柔らかくなってきた。

打撃練習に続いて、ネットスローのメニューに入る。距離は約5メートル。「投げる」ことのポイントも2つ。「リリース」と「上半身の使い方」だ。右投げを例にすると、半円型のストレッチポールに軸足となる右ひざを置き、右肘を上げる。ひざ立ちでトップを作った状態からスタートする。「故障しない投げ方を覚えるために、肘は直角にしましょう」。 グラブをはめた左手で目標へ的を作り、投げる時は強く引く。反動で右腕がしなっていく。「上半身の使い方が分かれば、下半身はついてくる。打撃とポイントは同じで、フォームは自然とできていくものなんです」。

投げ方の指導を受ける子どもたち
投げ方の指導を受ける子どもたち

昨今は野球のボールを使えない公園も多く、野球をできる環境が限られている。それでもポイントを押さえた練習法を知れば、小さなスペースでも十分に基礎練習を積むことができる。次回は「捕る」についてのポイントを取り上げます。

◆スーパースラッガー野球塾 プロ野球で10年間プレーした若林氏が、08年5月に開塾した「ベースボールアスリート育成のための野球塾」。基本的な野球技術からプロ野球選手にも共通する合理的動作を若林氏がまとめた「BCM野球指導法」を基に、幼児から小、中学生、一般男女まで幅広く指導している。住所は東京都杉並区高円寺南5の44の1。アクセスはJR中央、総武線高円寺駅、中野駅から各5分ほど。料金、開塾時間など詳細はホームページ(http://www.89baseball.com/index.html)で。

◆若林憲一(わかばやし・けんいち)1953年(昭28)5月3日生まれ。山梨県甲府市出身。甲府商から71年ドラフト6位で大洋入団。内野手で入団も74年に外野手へ転向。6年目の77年に1軍デビューし、主に代走、守備固めで出場。81年は2軍コーチを兼任し、同年引退。通算163試合、51打数10安打、打率1割9分6厘、1本塁打、5打点、6盗塁。現役時代は177センチ、82キロ。右投げ両打ち。今年6月7日に息子の晃弘がロッテ戦で初アーチを記録し、プロ野球史上7組目の親子での本塁打を達成した。

77年、大洋時代の若林憲一氏
77年、大洋時代の若林憲一氏

◆若林晃弘(わかばやし・あきひろ)1993年(平5)8月26日、東京都中野区生まれ。桃園第三小1年から野球を始める。中野第九中では目黒西シニアに所属。桐蔭学園では楽天茂木と同期で、3年夏は神奈川大会4強。法大では4年秋に二塁手でベストナイン獲得。JX-ENEOSを経て、17年ドラフト6位で巨人入団。18年5月12日、中日戦でプロ初出場。2年目の今季は、77試合に出場して5本塁打、21打点、打率2割3分9厘。今季推定年俸880万円。180センチ、77キロ。右投げ両打ち。

巨人で活躍する憲一氏の息子・若林晃弘
巨人で活躍する憲一氏の息子・若林晃弘

(2019年10月30日、ニッカンスポーツ・コム掲載)