<週中ベースボール:プロに聞く(5)>

日本ハム松本剛外野手(26)が、子どもたちへ野球上達へ向けた2つのキーワードを授けた。とにかく野球が大好きだった自身の少年時代を振り返りながら「1人練習」と「外遊び」のススメを説いた。

松本は、とにかく野球が大好きな少年だった。小学校低学年の時は、放課後が待ち遠しかった。

契約更改を終え会見する日本ハム松本(19年11月28日撮影)
契約更改を終え会見する日本ハム松本(19年11月28日撮影)

松本 小さい頃は、いつも壁当てをやっていました。誰よりもやった自信があります。常にボールとグラブを持っていて、友達が一緒にいればキャッチボールをやりましたが、いなければ自宅のマンションの壁に当てていました。白いチョークで的となるマルを書いたりして。すごく近所迷惑だったと思いますが、当時は夢中でしたね。

自宅付近に川口オートレース場があった。非開催日は広大な駐車場をグラウンド代わりにして、友達と野球をしたこともあったという。ただ、いつも仲間が集まれるわけではない。そんなときは、1人でも「野球」をやっていた。

松本 壁当てで守備練習、バッティングは素振りですね。1人でできることは限られますが、当時の「1人練習」が今の自分の土台になっている気がします。野球って、1人で練習できる選手が強いと思うんです。野球は、みんなでやるから楽しいスポーツなんですけど、うまくなるには1人で練習できるかだと思います。コーチが24時間、付いてくれるわけじゃありません。それはプロになった今、より実感します。

週1回だけ、バッティングセンターに通うことを両親から許されていた。熱心に1人で打ち込んでいたが、その姿に周囲の大人も感化されていた。

自主トレーニングで打撃練習をする日本ハム松本
自主トレーニングで打撃練習をする日本ハム松本

松本 親に迷惑はかけていましたけど週に1回、1000円を握りしめて、バッティングセンターに通っていました。毎週木曜日です。1ゲーム200円ですが、1000円チケットを買うと6ゲーム、打てました。時には自分の小遣いで1ゲームだけ打ちに行くこともあって、店員さんともすごく仲良くなりました。ある日、その店員さんが「もういいぞ、タダで」と好きなだけ打たせてくれたこともありました。ありがたかったですね。

1人練習の合間には友達と遊ぶこともあったが、家の中でテレビゲームをすることはなかった。

松本 鬼ごっこや泥警とかで遊んでいましたね。走る部分の基礎体力は、その辺で養われた気がします。けっこう大事なことだと思います。鬼ごっこでは思わず友達とぶつかりそうになったりする時もありますが、瞬時に避けたりすることも。それが瞬発力や判断力につながったりすると思います。そういう外遊びの中で覚えた体の使い方などは野球や、それ以外のスポーツでも生きてくるのではないでしょうか。

のびのびと遊び、好きなことにはぶれない心で没頭する。幼少期に野球をする上での素養を身につける、1つの方法論なのかもしれない。

松本 外で遊んだ方がいいし、1人で練習できる人間は強いです。コーチや先輩からアドバイスをもらっても、言われたことを1人で表現できるかが大事になります。僕も小さい頃は、そこまで深く考えてやってはいませんでしたが、当時から、人にやりなさいと言われてからやるのは嫌でしたし、自発的にやったことを人に気づかれたくありませんでした。そんな性格も1人練習に向いていたのかもしれません。

「外遊び」と「1人練習」がプロ野球選手松本剛の礎を築いた。【木下大輔】

◆松本剛(まつもと・ごう)1993年(平5)8月11日、埼玉県川口市生まれ。帝京では1年春からベンチ入り。正遊撃手として09年夏、10年春、11年夏と3度の甲子園に出場。11年ドラフト2位で日本ハム入団。17年アジアプロ野球チャンピオンシップ、18年侍ジャパン強化試合で日本代表。180センチ、82キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1800万円。

日本ハム松本の年度別成績
日本ハム松本の年度別成績

(2020年3月4日、ニッカンスポーツ・コム掲載)