<医療ライター・しんどうとも「メンタル回復法」(4)>
近年注目を集める「マインドフルネス」。「心と身体の正しい休め方」(ディスカバートゥエンティワン)の著者で禅僧、精神科・心療内科医の川野泰周さんに聞いた。
「マインドフルネスはいわば“理論的に裏付けられた脳疲労の回復法”。脳活動がどうなっているかを、目で見えなくても、心のレベルにおいてそれが必要だとブッダは悟った。MRIが無い2500年前から仏教の世界ではそれをやっていたのです」
仏教で心をどう考えるか。川野さんは続ける。
「仏教では“心”をあまり規定してはおらず追求もしていません。仏教は人間には“感覚”が存在しているから、その総和・総体を“心”と捉えるという考え方です。“感覚”には6種類あり“見る、聞く、嗅ぐ、触る、味わう”の5種類(五感)に、“思考と感情”という内側からわいてくる感覚を加えて“六根(ろっこん)”とします。お遍路さんが“六根清浄(しょうじょう)”といいながら歩きますが、“清らかでありますように”という意味があるのです」
川野さんは、“六感で世界がつくられる”とし、あえてひとつの感覚に注意を向ける。
「言い換えれば心が穏やかになる、安らかになるということ。呼吸だけに注意を向ければ“呼吸の瞑想(めいそう)”、味だけなら“食べる瞑想”。生きることすべてが“瞑想”になるわけです」
ブッダの知恵が現代人に求められている。
(2020年10月18日、ニッカンスポーツ・コム掲載)