<医療ライター・しんどうとも「メンタル回復法」(20)>
心の持ちようは言葉によって変わってくるもの。禅僧で精神科・心療内科医の川野泰周さんはこう話す。
「言葉はそれにより自分の気持ちや気分が変わってくるもので、気分が変われば身体の調子も変わってきます。どんな言葉を選ぶかはとても大切なことなのです」
川野さんが勧めるのは、マイナスの意味を含んだ言葉を、プラスの言葉を否定するというやり方。たとえば「自分は不幸だ」と言うより、「幸せではない」と置き換える。「つらい」を「うれしくはない」という風に。
「プラスの言葉を否定する際、“やんわり”と否定するのがポイントです。“ちょっと幸せではない”とか、“あまりうれしい状況ではない”という表現に言い換えましょう。口に出して発する言葉だけでなく、心の中で使う言葉も変えてみましょう」
「プラスの言葉+やんわり否定」と覚えておこう。加えて、状況を限定することも効果的。つらい状況に対して、“いまはよくない”とか“こういう状況のときは、楽しくない”などという具合だ。
「そうやって言葉の使い方をていねいに工夫すると、自分自身が直面している状況の重さが変わってくるもの。自分以外の人に対しても、“つらいよね”というより、“元気いっぱいとは言えないよね”と状況をマイルドにしたほうが相手の気持ちも少しは救われると思います」
古来、言葉には魂が宿ると言われている。心を込めて相手を気遣ってはどうだろう。
(2020年11月15日、ニッカンスポーツ・コム掲載)