<思いよ届け! 特別な冬(5)>
5年連続46回目出場の強豪、報徳学園(兵庫)。竹ノ内堅人主将(3年)は、6月の練習中に右膝靱帯(じんたい)を断裂。高校最後の花園はフィールド復帰がかなわず、水配りなどチームメートのサポート役に徹してきた。花園初戦は28日。昨年準Vの御所実(奈良)と激突する。
高校ラストは、頼れる仲間を支える。右膝のけがは完治まで10カ月の診断。7月に手術を受け、走れるようになったのは秋のことだ。ただ、悲愴(ひそう)感ない。
花園を決めた天理(奈良)戦の直前だった。「試合前に日頃は照れくさくて言われないけど、試合前にみんな熱くなって。『お前のために』と言ってくれて」。花園出場を決めると、チームメートからは「花園(に)連れて行けるぞ」「堅人を連れて行けるぞ」と言葉が飛び交った。
「このチームメートで良かったと思いました。自分も試合に出られたらな-とは思いましたけど…。(けがは)あの時、注意深くしていたら-とか、思うことはあるけど、チームが花園導いてくれたので。後悔はないです」
仲間への感謝の念が尽きない竹ノ内の胸には、会ったことはないが、同じ主将として憧れる背中がある。来春、竹ノ内が進学予定の筑波大ラグビー部で、今季主将を務めていた岡崎航大さん(4年)だ。
「ほれました」と話すのが、12日の全国大学選手権3回戦、筑波大-流通経大の試合だ。筑波大は、引き分けによる抽せんで敗退した。岡崎さんは試合途中で負傷交代したが、竹ノ内はその姿に惚れ込んだ。
「目立つプレーをするのではなく、下に落ちているボールを拾ったりするのが速い。献身的にタックルしたり、体を張っているのがかっこよかった」
堅実なプレーや献身的な振る舞いにくぎ付けになった。岡崎さんは長崎北陽台で花園に出場したが、1回戦で右膝の前十字靱帯(じんたい)を損傷した過去がある。「岡崎さんも過去に膝をけがしていて。自分と似た境遇というか…」。憧れの人も苦難を乗り越えていたと知った。
「チームが悪い方向に向かないように声かけをしたり、落ち着かせられる発言が出来たらベスト。自分にやれることをやりたい」
フィールドに立てなくても、主将らしく-。心は仲間とともに、楕円(だえん)球を追う。
◆報徳学園 1911年(明44)創立の私立校。ラグビー部は52年創部。兵庫県大会では決勝で関西学院に敗れ、敗者復活のオータムブロックチャレンジトーナメントへ。その決勝で天理(奈良)を破り、5大会連続46回目の花園出場を決めた。主なOBにラグビートップリーグ・サントリーの梶村祐介ら。
(2020年12月26日、ニッカンスポーツ・コム掲載)