<「生理をタブー視しないで」女性オリンピアンの主張(2)>
女性アスリートにとって避けては通れない「生理」に言及する選手が増えている。競泳のオリンピアン伊藤華英さん(36)が、その経験から今、発信したいことを伝える。
変わり始めている意識、努力発表できる環境を
女性アスリートが生理を語る機会が増えました。では男性指導者とどう接したらいいか。選手から話すのか、男性指導者から聞くのか。私は、お互いに歩み寄ることが大事と考えます。
生理は体と向き合うことであり、競技力向上に密接に関わります。10年前、競泳のコーチ講習会で産婦人科医が女性の体について講義しました。男性コーチが一生懸命聞いて選手に伝えると、親御さんに「セクハラだ」と言われたそうです。
ただ10年前に比べて時代は少しずつ変わってきたと感じます。お互いに何となく「らしいよ」で終わらせないほうがいい。第三者であるドクター、またこの話題に関しては親御さんが間に入ってもいいでしょう。
選手が1人で考えてもよくなりません。「どうしたらいいですか」と相談する勇気を、男性コーチは選手に聞ける信頼関係を築いてほしい。また競技団体は代表チームに産婦人科医を加えてほしい。近年、五輪日本選手団の男女比は半々です。選手の半数にとって有益な人材を加えることはパフォーマンス向上において理にかなっています。
私は、16年リオ・オリンピック(五輪)で中国の競泳選手が「今日は生理でパフォーマンスが悪かった」と発言したことが気になって、17年にコラムを書きました。反響は大きく、女性にとって当たり前だからこそ伝えられていなかったと感じました。無月経になって疲労骨折して涙の引退-。そんな姿を見るのはつらい。努力を発表できる健康な体でいてほしいと願います。(談)
◆伊藤華英(いとう・はなえ)1985年(昭60)1月18日、埼玉県生まれ。東京成徳大高-日大-セントラルスポーツ。背泳ぎ、自由形で活躍。五輪は08年北京100メートル背泳ぎ8位、12年ロンドン五輪は自由形で出場、同秋に引退。19年に結婚し現在は1児の母。
(2021年1月29日、ニッカンスポーツ・コム掲載)