東京五輪の卓球混合ダブルスで金メダルを獲得した水谷隼(32=木下グループ)が30日、オンラインで取材に応じ、来月9日に開幕するTリーグに一部参戦することを明かした。ただし日本代表など第一線の選手からは退く。
「五輪では数え切れないぐらいのサプリメントや目薬などを摂取し、1日1日を延命してきた感じ。五輪と同じようなパフォーマンスはもうできない。選手というより愛好家としてプレーする自分を見てほしい」と率直な思いを語った。
また五輪の報奨金として木下グループから水谷が2000万円、張本智和(18)が500万円を受け取った。
気持ち切り替え、新たなステージへ
-五輪から1カ月が経過した感想は
水谷 すっきりしている。それまでどんな大会を終えても、卓球選手としてこれからも卓球をやっていかないといけないと思っていた。サプリメントとか目薬、あり得ない量を摂取してきた大きな大会が終わったら気持ちを切り替えて次の大会に向かっていたが、今は一段落して卓球のことを考える時間が少なくなってやりきった感というか、燃え尽きた感をすごく感じている。
-五輪の反響は大きい
水谷 オリンピック期間中からものすごく感じている。SNSのメッセージもフォロワーもめちゃくちゃ増えた。15万人くらいだったのが25、26万とか。
-自分にとって面白いと思っていることは
水谷 卓球をずっとやってきて、練習相手も練習メニューも、指導される内容も10年くらい変わらなかった。毎日毎日が反復練習の積み重ね。強くなるにはそれが必要だが、精神的にはマンネリ化してきて。飽きてきたりとか、違うことやりたいとかすごく思っていた。今は(テレビに出たり)毎日新しいことにチャレンジできてすごく楽しい。
-金メダリストの実感は
水谷 リオで銀、銅を獲得した際は逆だったが今回、他のアスリートと接していて金は特別な存在と感じている。例えば、今もテレビで共演したときに銀メダリスト、銅メダリストの人と会うとちょっと一歩引かれてるような感じがして、金メダルの存在は偉大なんだなって感じる。それだけ全アスリートがそこに対して一生懸命頑張っているということ。今まで僕も金メダリストを尊敬し、うらやましかった。金メダリストになって優越感というか、心に余裕ができた。
-テレビに出る狙いは
水谷 オファーをいただいたので、それに対して誠実に応えたい。自分が必要だとされているならその期待に応えたい。今まで自分が孤独で生きてきたので、誰かに頼られるとか必要にされるっていうことを感じたことがなくて。すごくそれがうれしい。それこそ一緒に男子団体で戦った丹羽選手、張本選手にも期待されて託してくれたっていうのがすごくうれしくて。だからこそ卓球を離れても誰かのために尽くしたい気持ちは強く持っている。自分が出ることによって、子どもたちが憧れを持ったりする。卓球選手がテレビに出ていたら、いずれ自分たちも活躍してテレビに出たいとか、コマーシャルに出たいとか。強い憧れを持ってくれると思う。
報奨金は医療事業などへ寄付
-木下グループからもらった賞金2000万円の使い道は
水谷 サプライズ的に使いたいが、現実に貯金だと思う。
-自分へのご褒美は
水谷 まずやっぱり医療事業の方やホームレスの方に寄付というのはずっと考えていたのでタイミングを見計らってすぐにでもやりたい。
-前々から思っていたのか
水谷 もともとコロナ前から寄付とかはしてきたが、そんなに大きい額じゃなくて、個人的にやっていた。コロナが起きてからは張本選手とも大会の賞金を寄付しようという話はしていた。けど自分が賞金をもらえるほどの結果を全然残すことができず寄付できなかった。自分たちがオリンピックができた、活躍できたというのも皆さんのご理解とご支援のおかげなので少しでも協力できたらいいなと思う。
-卓球への注目度が上がっている。第一人者として世間の目の変わり方をどう見ているか
水谷 自分の本音を言えば、やっと時代が追いついてきたなと思う。15年前、初めて卓球がテレビで放送されるようになって、自分もずっとそこから活動してきた。特に男子はずっと日の当たらない中でやってきたが自分は必ず「卓球男子も見てもらえればすごさがわかる」と言っていた。今回の東京オリンピックで満開の花が咲いた。卓球の素晴らしさをいろんな人に知ってもらえてうれしかった。この流れを消さないように張本選手を中心に後輩たちには、頑張ってもらいたい。
-卓球について2人が話し合ったことは
水谷 卓球界の今後とか普及活動は張本選手は選手なので考える必要はない。日本卓球協会や引退を決めた自分たちがやっていかないといけないこと。彼は選手なので世界選手権やオリンピックという大きい舞台で結果を残せばいい。陰ながら僕たちはそこをサポートする。
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