「女性アスリートの三主徴(Female Athlete Traid:FAT)」という言葉を耳にしたことはありませんか? 「利用できるエネルギーの不足」が「視床下部性無月経」「骨粗しょう症」につながり、健康で高い競技力を保つことが難しくなるという女性アスリートが陥りやすい3つの障害のことを示します。

最近、色々なところでこの言葉が使われるようになりましたが、この中の1つである「利用できるエネルギーの不足」の意味と対処方法について、今月と来月の2回に分けてお伝えします。

「日常生活を営むためのエネルギー」

そもそも「利用できるエネルギーの不足」はどういった状態のことを示すのでしょうか。「利用できるエネルギー」は「食事から得られるエネルギー」から「運動で消費するエネルギー」を引いたものになります。つまり、「日常生活を営むために使うことができるエネルギー」と考えるとわかりやすいと思います。

このエネルギーが少ないということは、勉強や様々な活動のためのエネルギーが少ないということで、身長を伸ばしたり、筋肉をつけたりする発育・発達のために使えるエネルギーも少ないということになります。

身長が伸びない、月経不順にも

そのような状態が続けば、思ったほど身長が伸びなかったり、初経が遅れたり、初経後も女性ホルモンのバランスが崩れて「月経不順」や「無月経」になったりします。女性ホルモンのバランスが崩れれば、一番骨を強くできる成長期に骨が強くならずに骨密度の低下につながる可能性が大きくなります。

「利用できるエネルギー」が少ない状態だと、生活するためのエネルギーを確保して、残りで発育・発達をしないといけません。小・中学生では身長が急に伸びる「成長スパート」が見られない選手がいますが、その状態こそ、「利用できるエネルギーの不足」です。

授業中寝てしまう、疲れがとれない…も

さらに体が、日常生活でなるべくエネルギーを消費しないようにしていきます。スポーツをしている子が授業中眠くなって寝てしまうのは、寝ることが一番エネルギーを消費しないからなのです。「朝起きづらい」「運動後は夕食も食べずに寝てしまう」という状態も、利用できるエネルギー不足の選手にありがちです。「疲れがとれない」、貧血の所見はないのに「パフォーマンスが落ちた」などと訴える選手も少なくありません。

普段、サポートをしている選手の中でも利用できるエネルギー不足の選手は、「寝付けない」「夜中に目が覚める」などの睡眠障害や甘いものの過食、泣いたり怒ったりと気持ちの浮き沈みが激しいなどの傾向が多い気がします。

このように、貧血や月経異常、疲労骨折など、明らかな不調や故障ではないにしても、様々な不定愁訴が現れるため、思い当たることがあった場合には「利用できるエネルギーの不足」を疑ってみた方がよいかもしれません。

「利用できるエネルギーの不足」かどうかチェック

「利用できるエネルギーの不足」ではないか、下記の項目をチェックしてみましょう。

□練習から帰ってきたら、ご飯も食べずに寝てしまう。
□朝起きづらい。授業中眠たくなる。寝てしまう。
□成長期が来ない
□夜中に目が覚める。熟睡感がない。
□疲れやすい。寝ても疲れがとれない。
□イライラする。怒りっぽい。悲しくなる。すぐ泣く。
□甘いものが食べたい。ネットで甘いもの検索する。
□初経が来ない。生理が止まった。不規則になった。生理痛が重い。
□手荒れや肌の乾燥、髪の毛のパサつきがある。
□風邪をひきやすい。

今回、紹介するのは「キンパ風おにぎらず」です。「おにぎらず」は、握らずに作るので簡単な上に、おにぎりより具を多く入れられるというメリットがあります。具の組み合わせで、タンパク源や野菜も一度に摂ることが出来ますし、切り方によって、食べる量も調整できます。

寒い日にはインスタントのカップスープやみそ汁をつければ、バランスも取れて食べやすく、体も温まります。

女子アスリート/管理栄養士・佐藤郁子