夏休みに入り、練習時間が変わったり、合宿があったり、生活リズムが変わったアスリートも多いと思います。長期の休みは学校がない分、練習時間が長くなることが多いですが、逆に朝はゆっくり寝ていられる場合もあり、生活リズムとともに食事のリズムが崩れることが多いようです。

今回は夏休みに起こりやすい食欲低下と秋以降のコンディショニングの関係と予防策についてお話しします。

食欲低下でエネルギー不足

夏は暑さから食欲が落ちることに加え、練習量の多さから体が疲れ、さらに食欲が低下することがあります。また、睡眠時間を確保できる代わりに起床時間が遅くなると、朝食の時間が遅くなり、昼食の量が減ったり、ブランチになって昼食が抜けたりすることも少なくありません。

練習量が増えてエネルギー消費量が増えるのに食事量が低下すれば、確実にエネルギーをはじめ様々な栄養素の不足を引き起こし、体重減少につながります。朝食や昼食を欠食する、簡単なものになって十分な栄養素が入ってこない場合も同様です。

不足しているエネルギーや栄養素を身体の中の貯金(体脂肪や筋肉)から補うと、必然的に体重減少が起こります。体重が減っても夏の間は何とか練習をこなせますが、貯金が底をついた時に「貧血」や「筋膜炎」「骨膜炎」などの故障につながります。それが秋になるのか冬になるのかは、アスリートが持っている貯金によって異なります。貯金をいっぱいもっていれば、故障につながらないこともありますが、合宿や夏休み後半の練習を乗り越えられないアスリートも多くいるのです。

なぜ、食欲低下するのか

そもそもなぜ、夏場に食欲が低下するのでしょうか。

暑くなると、たくさん水分補給をしなくてはなりませんから、必然的に冷たい飲み物を飲むことが多くなります。食事も温かいものより、冷たい食べ物を好んで摂ることが多くなると胃腸が冷え、機能低下を招くため食欲低下が起こりやすくなります。また、夏の暑さそのものや外の気温と室内の温度の差から自律神経が乱れやすくなり、食欲や腸の動きを司っている「副交感神経」が弱まることで食欲低下を引き起こすこともあります。

食欲がない時にどう食べるか

体重を減少させないために一番重要なのは十分なエネルギーを摂ることです。エネルギーを持っている栄養素は「炭水化物」「タンパク質」「脂質」で三大栄養素と呼ばれています。料理で言うと「主食」と「主菜」「乳製品」「果物」に多く含まれます。

もちろん、「副菜」に多く含まれる「ビタミン」「ミネラル」も重要ですが、エネルギーはほとんどありません。食物繊維を多く含みカサもあるため、副菜を先に食べてしまうと、おなかが膨れてしまう上に消化に時間がかかり、ますます胃が疲れてしまいます。とにかく、食欲がない時にエネルギーを確保するには、最低でも主食と主菜を毎食揃えましょう。

主食と主菜、セットで摂る

ここで注意が必要なのは、主食と主菜のどちらか1つだけではダメということです。主食だけだと炭水化物が多くなり、炭水化物を代謝するためのビタミンB群が不足してうまくエネルギーに代わりません。代わらなければエネルギー不足は解決しないのです。

逆に主菜だけになるとタンパク質は多く摂れますが、炭水化物があまり含まれていないために、うまくエネルギーに代わりません。その上、タンパク質を多く含む食品は消化に時間がかかり、野菜同様に胃が疲れてしまいます。脂質を多く含むものは下痢を引き起こす可能性もあります。

消化良く食べやすいもの

食欲がないのに「栄養バランス」にこだわりすぎて食事量が減り、エネルギー不足を引き起こすのであれば、無理に完ぺきな栄養バランスを目指すより、自分にとって「食べやすい」ものを食べる方がストレスも少なく、食事量も減りません。

温かいご飯が食べづらいのであれば、冷まして食べても良いですし、ごはん自体が食べにくいのであれば、パンや麺を食べればよく、カレーなら食べられるというのであれば、カレーを食べればよいのです。形はどうであれ、主食と主菜がそろうように、食べられるものをチョイスすればよいのです。

量が食べられなければ何回も

1回の食事量が減った場合、食事の回数を増やして1日に必要なエネルギー量を確保しましょう。通常、3回の食事+補食をとっているならば、1回の食事量を減らし、補食の分量を増やして5~6回食にします。1回の食事を単純に2回に分ける方法もありますし、3回の食事+軽食を2~3回入れる方法もあります。

冷たいもの、水分ばかりはNG

夏場は特に水分補給が重要になりますが、計画的に摂らず、のどの渇きに任せて水分補給をしてしまうと、まとめて冷たい飲み物を飲んでしまいます。そうなると、水分だけでおなか一杯になってしまいますし、胃にも負担がかかります。練習中は冷たい飲み物でないと体が冷えませんが、練習以外の時の水分補給は常温や温かい飲み物がいいように思います。

食事がのどに通りにくいとお茶など水分で流し込むアスリートもいるようですが、流し込むとよく噛まないまま胃に入ってしまい、消化に時間がかかります。食欲が低下して食べる量が減っているからこそ、食べたものはしっかり吸収したいものです。

こんな時こそサプリメント

食事から十分な栄養を摂ることが難しい場合にこそ、サプリメントを利用するときです。サプリメント使用方法について私がアスリートに説明するときは「食事で充足させることが出来ない栄養素を補う場合に使用し、食事が十分摂れている場合には基本に使わなくて良い」と話しています。

しかし、どうしてもエネルギーが摂れそうになければ、エネルギーゼリーを食事にプラスしたり、補食に摂ったりするのが良いでしょう。エネルギーを増やすという観点から、MCTオイルなどをサラダに追加するのもよい方法です。タンパク質が摂れそうになければ、プロテインを飲んだり、飲む回数をいつもより増やしたりします。効率よく栄養素を補給できるサプリメントはこのような時こそ、うまく利用すると良いと思います。

暑い夏こそ補食は栄養価の高いもの

今回紹介するのは「3色豆腐フルーツ白玉」です。1食の食事量を増やそうと思っても、なかなか食べられないというアスリートは補食を上手く利用することで、1日に必要なエネルギーを確保することが可能になります。

補食こそあっさりしているけれど、栄養価は高いものをなるべく選んで食べたいものです。簡単に作れるので、自分で作ってみるのもいいと思います。

通常、白玉団子は白玉粉に水を加えて練ります。水の替わりに豆腐を加えることによってタンパク質が摂れるようになりますし、カボチャなどを加えることによってビタミンも増えます。

まとめてこねて茹でた白玉団子は冷凍できるので、その都度作る手間も省ける上に、砂糖醤油をかけて「みたらし団子風」、お湯で溶いたゆで小豆缶に入れて「お汁粉」、具だくさんみそ汁の中に入れて「すいとん」にするなどいろいろなアレンジが効く優れものです。

女子アスリート/管理栄養士・佐藤郁子