貧血予防は、アスリートがコンディション管理をする上で抑えておきたいポイントです。
「前回のコラム」では、貧血が治らない時の対処法を紹介しました。「疲れがとれない」「バテて練習についていけない」など体に症状がでている場合、すでに貧血状態であることが推測されます。この状態を放置すると、日常的に立ちくらみや息切れ、頭痛やむくみなどが生じ、生活もままならない状況に陥ります。
今回は、受診する際に確認すべき「血液検査値」についてお話ししていきましょう。
メディカルチェックの重要性
理想を言えば、ジュニア期から定期的にメディカルチェックをすることが、競技力向上のみならず、健全な発育発達においても望ましいのですが、そうもいかないのが現状です。その分、家庭や自分で次のことをチェックしていきましょう。
●発育発達がスムーズに行われているか、定期的に成長曲線を確認。
●食事量は適量か(運動に見合っているか)、休養は十分か(睡眠時間やオフ日の確保はできているか、ケアはできているか)、体の動きはどうか(ケガや違和感はないか)などを毎日確認。
貧血を疑って病院を受診する場合は、必ず「スポーツをしている」ことを申し出て、血液検査値の項目の相談をしてみましょう。
抑えておきたい検査項目
貧血かどうかを見るためには、まずはヘモグロビン(Hb)値を計測すると思います。ただ、この検査値だけでは、貧血が隠れていることがわからないケースがあります。血液中のヘモグロビンが少なくなった際に動員される貯蔵鉄「フェリチン」が、十分にあるかどうかも大切な要素です。採血をする際は、フェリチンも測定希望であることを医師に伝えてみましょう。
フェリチンが検査項目に入っていない場合、MCV、MCH、MCHC(赤血球恒数)で赤血球1個あたりの大きさや量、ヘモグロビン濃度が分かります。加えて、血清中の鉄(Fe)と鉄と結合していないトランスフェリン濃度であるUIBC、トランスフェリン全体の濃度TUBC*が確認できれば、貧血の種類も分かります。そのほか葉酸やB12 、亜鉛不足などの理由から貧血を疑う場合は、医師の判断に基づき、これらの項目も適宜入れるといいでしょう。
女性はヘモグロビン13g/dl以上
高い運動負荷がかかるアスリートでは、一般人の鉄欠乏性貧血の診断基準では不足と考えられるため、女性ではヘモグロビン13g/dl(一般的には12g/dl)、フェリチン30ng/ml以下の場合、貧血を疑います。Feが低く、UIBCが高い場合は鉄欠乏性貧血が疑われます。
一方、Feが高くUIBCが低い場合には、溶血性貧血が疑われます。陸上長距離選手など激しいトレーニングで足底に大きな衝撃を受けることにより、血管内でヘモグロビンが破壊される場合に多く見られる貧血です。Fe 、UIBCの両方が低い場合は炎症があることが推測されます。
また、ヘモグロビンと合わせて赤血球数、ヘマトクリットの低値でも貧血と判断されます。赤血球の大きさを測るMCVや、赤血球のヘモグロビン濃度(MCHC)も分かります。
検査値から貧血の種類や傾向を確認
これらの検査値から貧血の種類や傾向が確認できます。1回測定すれば傾向が分かるとともに、鉄剤の処方やサプリメント、食事の摂り方を工夫することで自分のコンディション管理がつかめます。しかし、現在の体調と来年の体調は異なりますので、貧血になりやすい選手は定期的に血液検査を実施して、自分のコンディション管理に生かしていきましょう。
今回紹介するのは「アサリの卵とじ」です。アサリは水煮缶を使います。アサリは鉄が豊富な食材。缶詰は保存が利くので手元に置き、定期的に調理に使うと良いでしょう。
缶詰の汁にも鉄が入っていますので、丸ごと使って鉄分補給をしていきましょう。
<関連コラム>