<コロナに翻弄された人たち:2020年を振り返る>
昨年の高校総体(熊本)で団体準優勝した東奥義塾(青森)女子剣道部。今年は新型コロナウイルスの影響で高校剣道4大タイトル(全国選抜、魁星旗、玉竜旗、高校総体)が全て中止となった。それでも、女子剣士らは次の目標に向かって前を向いている。1年から大将を務める斎藤とも主将(3年)は将来、教師を夢に描いている。
目標は師、子供たちに夢を与えられる教員に
木刀の一振り一振りに気持ちを込めた。
5月18日から全体練習を再開。感染防止を徹底するため、対人での試合稽古などは自粛中。素振りや負荷のかかるトレーニングを中心に精進している。伊藤敏哉監督(41)は「大会がなくなったのはつらい。でも、全てがダメになったわけではない。この経験をプラスに変えて、今後の糧にしなければいけない。下を向いている子はいない」と剣道を通じて、人間形成を重視する。
18年の高校総体で個人3位に輝き、県大会個人では2連覇とチームの柱である斎藤主将の夢は師の存在にあり、「将来は伊藤先生のように、子どもたちに夢を与えられる教員になりたい。先生に出会って、剣道だけでなく人間性の部分を教えてもらった」と志がぶれない。今後は下級生の指導をサポートすることで、教育を学んでいく。
寝食をともにするメンバーの結束は固い。女子部員14人は伊藤監督の自宅で寮生活を送る。身の回りのことは自分で行い、自立性も養っている。
同監督は「覚悟を決めて『日本一』を志した子らが高校3年間、剣道に取り組み、全てを学ぶ。多くの卒業生が大学、社会人になってからも活躍してくれている。ここでの寮生活が原点だと思います」。今は逆境の経験を糧に、新たな目標へ、研さんを積む。【佐藤究】
(2020年6月26日、ニッカンスポーツ・コム掲載)
【後日談】
当初、青森県独自で高校総体の代替大会開催を模索していた。だが、新型コロナ収束の見通しが立たないことや、剣道競技の性質上、3密が避けられないと判断され、安全・安心を考慮して実施されなかった。