<コロナに翻弄された人たち:2020年を振り返る>
町の風物詩にもなっているボート競技用人工河川の新田名部川。直線の流域が続く川面には、力強くボートをこぐ、田名部(青森)ボート部で主将を務めてきた佐々木丈(3年)の姿があった。
後輩に託した夢、3年生10人それぞれの道
初めて東北大会のダブルスカル2位となって出場権を得た“ボートの甲子園”と呼ばれる全国選抜大会(3月、静岡)に続き、全国総体(8月、大阪)も中止。最後の目標だった国体(10月、鹿児島)も延期。同学年の仲間は、すでに引退を決意した。
「自分は大学でもやる。まだボート人生は続くので頑張れています。1つのことを全力で続けることと、体力は身についたと思う」。自衛官を目指して防衛大学校への受験勉強を本格的に始めている山崎汰介(3年)のサポートにも感謝しながら「ボート界では大学のインカレ男女総合優勝はないので、それを実現したい」。
県内の代替大会も開催されず、全国総体代替大会(9月、大阪)もコロナ禍の感染状況により出場を断念した。近い将来の夢に向かって、練習を継続している。
小中学校では野球部だったが、諦めの早い性格だった。高校入学後、2歳上の兄がボート部だったこともあって勧誘され、入部。「練習は本当にきつかった。でも、お互いに励まし合って、青森で優勝したり東北で上位に入ることが出来た。仲間に感謝です」。陸で筋力や心肺機能を高めるエルゴメーターを使った練習で心も体も鍛えられた。
女子の大久保潤香(3年)は春、夏の成績次第では推薦入試で大学に進学する予定だったが、コロナ禍の影響で断念した。「最初は悔しい気持ちもあったけれど、冷めてしまった部分もある。それなら消防士になる夢をかなえようと思った」と違う道を選択。3年生10人は、後輩たちに全国上位進出の夢を託した。【鎌田直秀】
(2020年9月11日、ニッカンスポーツ・コム掲載)