<コロナに翻弄された人たち:2020年を振り返る>

出題テーマに沿った1枚の紙の「まんが」で高校生日本一を決める全国高校漫画選手権(まんが甲子園)は今年、新型コロナウイルスの影響で中止となった。代替イベントとして8月にオンライン上で実施された「まんが甲子園オンライン」で、静岡・伊東高城ケ崎分校の浅香里桜(りお)さん(3年)が、まんが部門で最優秀賞とデジタル作品賞をダブル受賞した。その作品は、コロナ禍の日常にクスッとした笑みをもたらせてくれるものだった。

最優秀賞とデジタル作品賞のダブル受賞を果たした浅香里桜さん(2020年9月11日)
最優秀賞とデジタル作品賞のダブル受賞を果たした浅香里桜さん(2020年9月11日)

国内外372作品の中から高校生の頂点に

「新しすぎる生活様式」をテーマに、国内外の高校生から寄せられた応募総数372点の中で、美術部の浅香さんが描いたのは、富士山を背景に写真撮影する観光客だった。「撮りますよ~はいマスク!!」の掛け声に合わせてみんなが一斉にマスクを外すと、顔にはマスクの日焼け跡が目立つ―。そんな笑いを誘うマンガを、液晶タブレットで描いた。

92年から毎年、高知県で開かれてきたまんが甲子園は今年、新型コロナの影響を受けて初めて中止になった。不安と暗いニュースが続く中、マンガでどうやって面白さを伝えられるか悩み、考えた結果、大げさな表現に頼るのではなく、日常の一コマから切り取ってみせた。

最優秀賞に選ばれた浅香さんの作品(ⓒまんが甲子園)
最優秀賞に選ばれた浅香さんの作品(ⓒまんが甲子園)

「今年はコロナウイルスの影響で暗いニュースが続く中で、私が描く漫画でどうやったら笑顔になっていただけるかなと考えたときに、この漫画ができた。クスッと笑える作品をつくりたかった」。

牧野圭一審査委員長からは「全力投球で、直球が投げ込まれ、緊迫感みなぎる審査会場で、力を抜いた変化球が、さわやかな笑いを誘い、優勝を勝ち取りました。TVニュースを『新型コロナウイルス』『マスク』が占領する中、この作品は一枚漫画の魅力を最大限発揮して、初めての『まんが甲子園オンライン審査』のピンチを見事に救いました」と講評された。