ある大学の女子陸上部のマネジャーさんから「アスリートにとっての正しい減量法について話をしてください」といった依頼がありました。詳しく聞くと、選手は体重が増えることを恐れて、食事の内容が乱れているというのです。
選手につけてもらった食事記録を見ると、重量感のあるご飯やおかずをあまり食べず、菓子パンだけだったり、朝食や夕食を抜いていたりする日もありました。栄養バランスは崩れ、貧血や月経不順、疲労回復遅延などの問題を抱えていました。そんなコンディションでは良いパフォーマンスを期待できません。
エネルギー摂取量(食事から摂るエネルギー)がエネルギー消費量(基礎代謝や運動等で使われるエネルギー)を下回れば、体重は減少していきます。しかし、アスリートにとっての減量とは体重を落とすことではなく、筋量を維持し、余分な体脂肪量を減らすことを目的とします。
それ以前に、本当に減量する必要があるのかを確認しなければなりません。痩せたいと言っている選手の多くは、体重を落とすことではなく、除脂肪体重(体重から体脂肪量を除いたもの)を増加させることに目を向けるべき、ということがよくあるからです。簡単に言うと、「カラダの中身を変える」ということです。
体の中身を変えるため賢い減量
それでは、賢い減量のポイントを以下に示します。
①主食・主菜・副菜・乳製品・果物という食事の基本の形を整える(「意識しよう、バランスの良い食事の基本の形」を参照)。
②3食食べる。特に朝食は必ず食べる(「試合の日の朝ごはん-なぜ朝食を食べなければいけないのか?」を参照)。
③低エネルギーで栄養価の高い食品を選ぶ。例えば、豚肉では同じ量の肉でも、バラ肉はモモ肉の2倍以上のカロリーがあり、脂質が多くタンパク質量は少ないなど、部位によって栄養価が異なる。
④蒸す、煮る、焼くなどの脂質を摂りすぎない調理法を選ぶ。
⑤野菜をしっかり摂る(1日350gが推奨量)。
⑥外食と間食のとり方をコントロールする。
写真は「高野豆腐の肉巻き」です。高野豆腐はタンパク質の他、カルシウムや鉄などのミネラルが豊富に含まれています。ボリュームもあり、咀嚼(そしゃく)回数も多く必要とするため、満足感も得られます。
スライスチーズを加えることで、さらにカルシウムを摂取でき、味に深みが出るので、より一層満足感も得られます。最近は湯戻し不要のものも出ています。乾物なので常備ストックしておくこともできますね。夕食の主菜として、またお弁当のおかずにも活用してください。
ちなみに、前述の大学女子陸上部にはオフ期直前に話をしましたが、その後、食事改善を行い、オフ期明けの大会ではこれまで以上の良い結果を出すことができたと報告を受けています。継続して日々の食事を整えることで、カラダ作りやコンディションを調整することができるでしょう。