アスリートは、パフォーマンス向上のために減量をすることがあります。その際、筋肉や骨、内臓などの除脂肪体重を維持し、体脂肪量を減少するのが成功パターンです。単に摂取エネルギー量(食べる量)を減らせば体重は減りますが、成功パターンにならないどころか、疲労骨折や貧血、女性アスリートの場合は摂食障害、無月経、骨粗しょう症などのリスクが高くなります。

ジュニア期のエネルギー不足は一生のリスク

疲労骨折における栄養面での原因はまず、カルシウムやビタミンD不足が考えられます。しかし、それらを意識的に摂っているにも関わらず、疲労骨折を起こした場合は、エネルギー不足が考えられます。

減量によって体重が減り、骨への刺激が減って骨密度が低下する場合や、破骨細胞の活動を活性化することで骨の形成が抑制されて骨密度が低下する場合もあります。特にジュニア期のエネルギー不足は、生涯にわたって疲労骨折や骨粗しょう症のリスクを高くすることを忘れてはいけません。

自分の身体を守るため節約モードに

貧血の原因は鉄不足が考えられますが、エネルギー不足になると身体は自分の身体を守ろうとエネルギー節約モードに入ります。ヘモグロビン濃度を下げて酸素の供給を減少させようとするため、眠くなったり、激しい動きがしづらくなったりします。また、エネルギー不足を補うためにタンパク質を分解するため、タンパク質がヘモグロビン合成に回らなくなり、貧血になることもあります。

このように、私たちの身体は一番に生命維持のために働くので、エネルギー不足によって、思わぬ弊害が起こることがあるのです。

アスリートの減量は、バランスの良い食事とトレーニングを組み合わせ、長い期間をかけて行うことが、ケガのリスクを下げ、リパウンドもしないコツです。減量する前に次のことを確認し、正しい方法で行いましょう。

(1)減量の必要性が本当にあるのかを考える(体組成を見て、必要ない場合もある)
(2)菓子や清涼飲料水など無駄なエネルギー摂取をしていないかなど、食事を振り返ってみる
(3)減量を行う場合は、どのくらいの量をどのくらいの期間をかけて減量するか考慮し、無理はしない
(4)トレーニングと組み合わせて行う

写真は「豚しゃぶ豆乳にゅうめん」です。減量時のほか、試合前などにもオススメのレシピです。

豚肉はもも肉など赤身の多い部位を使用し、湯がくことで無駄な油を使用しない調理法になります。タンパク質と糖質をエネルギーに変えるビタミンB1も多く含んでいます。豆乳はタンパク質、鉄、カルシウムが豊富です。

ラー油を加えていますが、辛いのが苦手な場合は、ゴマ油を使用すると風味が良くなります。めんつゆは製品によって塩分が異なるので味を見ながら調整してください。残ってしまったそうめんの消費にもお役立ちのメニューです。

管理栄養士・石村智子

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