かつて行われていた女子競輪が、12年7月にガールズケイリンとして復活してから、今年で記念すべき10年目に突入した。その1期生が、加瀬加奈子(41=新潟)。過去に大けが、そして出産を経て、今なお上位で活躍している。しかも、風圧を自ら受けて先頭を切って走る「自力」という戦法を貫いている。彼女の肉体を支える食事は、栄養摂取とともに、家族との貴重なだんらんの場だった。

青森競輪でガールズ最年長優勝を果たした加瀬加奈子(撮影・野島成浩)=2021年07月12日
青森競輪でガールズ最年長優勝を果たした加瀬加奈子(撮影・野島成浩)=2021年07月12日

家族との食事で心も体も栄養補給

加瀬 競走に行く前は、家族みんなでホットプレートで焼き肉です! 肉はその栄養価もさることながら、みんな大好き。笑顔になれますからね。

家族でホットプレートを囲み、エネルギーチャージ(本人提供)
家族でホットプレートを囲み、エネルギーチャージ(本人提供)

競輪選手は毎月約3回ほどレースに参加するために、全国の競輪場へと飛び回る。参加中は携帯も使えず、宿舎に缶詰。以前遠征先で落車し、硬膜下出血の重傷を負ったこともある。だからこそ、母と夫、そして19年に誕生した愛娘と一緒に食べる競走前の食事は、精神的なエネルギー補給にもなっている。

加瀬 新潟から新幹線で移動することが多いので、レースの帰りには東京駅で「利久」の牛タンを買って帰ります。娘は家での焼き肉はあまり食べないくせに、なぜか「利久」の牛タンは大好物なんですよ(笑い)。

レースを終えた体に豊富なタンパク質を補給でき、家族の笑顔も見られる、最高の手土産が牛タンだ。

東京駅で購入する牛タンは最高の手土産(本人提供)
東京駅で購入する牛タンは最高の手土産(本人提供)

今年7月、青森で1年4カ月ぶりとなる通算48度目の優勝を飾った。これがガールズケイリンでの最年長優勝新記録。

加瀬 久しぶりの優勝はうれしかったですね。45歳くらいまでは、頑張りたいなあ…。それも自力で!

競輪界には、成績不良による代謝制度が存在する、厳しい世界だ。最近では年齢が20歳も違う後輩と戦うことも多い。それでも、先陣を切ってレースを進める姿は、デビュー当初から変わっていない。家族と囲む肉パワーこそ、加瀬の原動力だ。【山本幸史】

◆加瀬加奈子(かせ・かなこ)1980年(昭55)5月31日、新潟県長岡市生まれ。順大卒。トライアスロンから自転車競技に専念し、日本代表として12年自転車トラック世界選手権オムニアムで14位。競輪学校(現養成所)のガールズ1期生として、12年7月平塚でデビューし、同年のガールズ最優秀選手賞に輝いた。164センチ、63キロ。血液型A。