騎手ならではの自炊生活とは？　JRA5年ぶりの女性ジョッキーとして今年3月にデビューした永島まなみ騎手（18＝栗東・高橋康厩舎所属）に、普段の食生活を聞いた。「料理しか趣味がないですね…」と照れ笑いする同騎手は、お店で食べた料理を見よう見まねで作ってしまうほどの腕前。体重、健康管理なども仕事のひとつといえる世界で、そこには騎手ならではの細かな料理法があった。【取材・構成＝奥田隼人】

幼少期から母の料理を手伝っていたという永島騎手。「それがすごく楽しくて、手伝っているうちに料理が好きになって。今では作るのが大好きです。切ったり炒めたりといろんな行程があって、最後においしいものができたら達成感がありますね」と笑う。

JRAジョッキーの1週間は、平日にトレーニングセンターで競走馬の調教をつけ、週末は競馬場でレースに騎乗する。レースでは騎乗馬ごとに負担重量が決まっており、またがる騎手もそれに合わせて体重を管理する必要がある。永島騎手の場合は毎週末、レースに合わせて47.5～48キロで調整。食事は日～木曜は自炊し、金、土曜は競馬場の調整ルームでとる。

「自分で料理を作るとなると、栄養がどうしても偏りがちになるので、競馬学校でも習った5大栄養素（炭水化物、脂質、タンパク質、無機質、ビタミン）などを基本にして料理するようにしています」

メインの追い切り日となる水曜は調教をつける頭数も多く、平日では一番ハードな日となる。「その後は、普段よりもタンパク質が多くとれるお肉などを使った料理を意識して作るようにしています」と、体に合わせた栄養摂取を心がけている。

ある水曜の1日の食事は次のようだ。

朝＝おにぎり
昼＝焼きサケ、ご飯、サラダ、みそ汁
夜＝豆腐ハンバーグ、ご飯、野菜サラダ、ポテトサラダ、豚汁、はちみつヨーグルト

調教開始時間が午前5時の夏場は午前3時に起床。朝食は調教前ということで、前夜に握っておいたおにぎりやパンなどの軽食を口に運ぶ。同10時に調教から帰宅し、昼食は同11時前後。栄養が偏らないよう、魚などを食すことも多いという。夜はガッツリ系。だが、ここでも食材などの“置き換え”を意識しているという。

「お肉が大好きなのでハンバーグや唐揚げなど、お肉系の料理はよく作ります」という永島騎手。それでも「油を使った料理は摂取カロリーがすごく多くなると競馬学校で学びました。なので、油や調味料などはカロリーや糖質がカットされているものをよく使います。食材の置き換えでは、ハンバーグを作る時にはお肉だけで作るのではなく、豆腐を混ぜてカロリーを下げたりしています」。さらには、昼夜は毎食、サラダと汁物は欠かさない。みそ汁は豆腐やネギ、タマネギなど具材を増やし、栄養を少しでもとれるようにしているという。

最近はコロナ禍で外出もままならないが「あまり外に出られないので、料理をする時は楽しくて気分転換にもなります」という。先日は、札幌遠征時にお店で食した韓国料理ヤンニョムチキンを自宅で再現。「お店で食べたのがおいしかったので、味を忘れないうちに。前日から漬け込んでおいて揚げました。隠し味ではちみつを少し入れたらお店の味に近づいたので、1人で喜んでいましたね。そういうところも楽しいです」。

レースでは周囲の先輩ジョッキーに交じって腕を磨く永島騎手。そんな彼女もひとたびキッチンに立てば、あどけない18歳の一面をのぞかせる。

◆永島まなみ（ながしま・まなみ）2002年（平14）10月27日生まれ、兵庫県出身。栗東・高橋康之厩舎所属。兵庫県競馬の調教師で元騎手の父・永島太郎師の姿に魅了され、騎手を目指す。目標は武豊騎手、岩田康誠騎手。3月14日中京２RアクイールでJRA初勝利。特技は水泳。座右の銘は「一生懸命」。