食で人と体は変わる。WBO女子世界アトム級王者の岩川美花(38=姫路木下)が自身の「食」を語った。女子最軽量級の世界王者は、10月15日に東京・後楽園ホールで鈴木奈々江(29=シュウ)を相手に2度目の防衛戦に臨む。王者・岩川の悩みは、多くの女性からブーイング必至の「体重が増えないんです」。

岩川美花
岩川美花

岩川の身長は161センチ。体重は通常の「増えたなと思う時」で48キロという。女子ボクシングで最軽量のアトム級のリミットは46.2キロ。多くのボクサーが苦しむ減量も、岩川には無関係。「食べなくても平気なんですね。それが最近特に代謝が上がっているのを感じます」と話す。

「食」に興味がない人生だった。「食事をとりたくない、小学校では給食を残すタイプでした」。そんな自身を変えたのがボクシングだった。中・高とバスケットボールに打ち込んだが、本命はボクシングだった。地上派で放送されていたボクシング中継にのめり込み、元WBC世界バンタム級王者辰吉丈一郎、元世界2階級制覇王者の畑山隆則に魅了されていたが、25歳の誕生日を機に「ボクシングをやると決めた」と何かが下りてきたという。

20年9月26日、WBO女子世界アトム級タイトルマッチで、岩川(中央)は初防衛しベルトを巻いて笑顔を見せる(撮影・上山淳一)
20年9月26日、WBO女子世界アトム級タイトルマッチで、岩川(中央)は初防衛しベルトを巻いて笑顔を見せる(撮影・上山淳一)

食べなくても平気だが、ボクシングのために1日3食をとる。朝はおにぎり、軽い昼食をはさみ、夜はがっつり食べる。それも夜のジムワークの後、さらにスポーツジムに通う日常で、帰宅は日付が変わるころ。「さすがにおなかぺこぺこです」。事前に作り置いた料理をチンして詰め込むと話したが、それは照れ隠しでは? の疑念がわくほどの豪華メニューだ。

昼食用のお弁当は軽め
昼食用のお弁当は軽め

9月某日の夕食は焼き肉定食。サラダ、じゃこおろし、アボカド、キムチ、みそ汁、玄米ごはんというラインアップ
9月某日の夕食は焼き肉定食。サラダ、じゃこおろし、アボカド、キムチ、みそ汁、玄米ごはんというラインアップ

世界戦を約1カ月後に控えた9月某日は焼き肉定食。メインだけでなくアボカドにサラダ、じゃこおろし、キムチにみそ汁と雑穀米のごはん。さらに別日はチキンソテーを軸においもごはん、おひたし、キムチにみそ汁、デザートのブドウとまるでプロのレシピ。減量苦がない岩川にとって唯一の調整法が「水分」という。「私の場合は2日で水分を調整して計量に持っていく」と明かした。

別の日の夕食はチキンソテーを軸に、おひたし、キムチ、みそ汁、おいもごはん、ブドウが並ぶ
別の日の夕食はチキンソテーを軸に、おひたし、キムチ、みそ汁、おいもごはん、ブドウが並ぶ

20代のころは、肌荒れに悩んでいたという。専門的な診断こそなかったが、自身の考えでパン中心だった食生活を変えたところ、一定の成果を得た。「今は化粧水も使っていません。女子力としてはどうかと思いますが、自然体が一番と感じました」と話す。

今回、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、約1年のブランクをへての試合となる。しかし、岩川は「不安はありません」。王者として目標は「強いよりうまいボクサーでありたい」。試合がなかった間、男女問わずに多くの名ボクサーの動画を見て、技術を吸収してきた。「うまさを見せたい」という岩川が、進化した姿を披露する。【実藤健一】

◆岩川美花(いわかわ・みか) 1983年(昭58)7月26日、高知県香南市生まれ。中・高とバスケットボールで活躍し11年12月、井岡弘樹ジムからプロデビュー。16年8月、東洋太平洋女子ライトフライ級王者。18年7月、WBO女子世界アトム級王者。今年4月、高砂ジムから姫路木下ジムへ移籍。身長161センチの右ボクサーファイター。戦績は10勝(3KO)1分け5敗。