減量と栄養管理。試合に向け、プロボクサーは同時に取り組まなければならない。12年ロンドン・オリンピック(五輪)ボクシング男子バンタム級銅メダリストで、現在はプロボクシング東洋太平洋、WBOアジア・パシフィック統一フェザー級王者清水聡(35=大橋)は年間250日以上、鍋料理で生活しているという。清水流のボクサー減量食にスポットを当てる。
常にフェザー級のリミット(57.1キロ)周辺の体重をキープしている清水は、次戦が決まると鍋の食生活を始める。ロードワーク前のバナナ、ヨーグルト、ゼリーの摂取を朝食とし、昼食と夕食は鍋になる。免疫機能を上げ、骨を強くするビタミンDが豊富なキノコを中心とする具材で腹を満たす。清水は「エリンギ、エノキ、シイタケ、シメジを多めに。そして白菜、キャベツ、ホウレン草、ニラ、ネギは入れます」と解説。キノコ類、野菜とともに少量の鶏肉か豚肉も加えるそうだ。
対戦相手の対策やスパーリングなどの実戦練習、フィジカル強化のメニューも多くなるために日々の肉体疲労も蓄積する。「試合が近づくと毎日、料理することが辛くなる。でも栄養管理もボクサーの仕事なので」と日曜日のオフに1週間分の水炊き鍋を用意。冷蔵庫に保管し、毎日必要な量を取り出し、みそ、しょうゆ、塩、ポン酢で味つけをローテーションしている。「あとは、ショウガ、ニンニクで風味も変わり、風邪予防にもなる」。これで毎日の鍋も飽きないという。
アマチュア時代、時にスナック菓子も食べていたという清水が栄養管理の徹底を開始したのはプロ転向した30歳あたり。大学では選手寮の食事、自衛隊では食堂もあり、何を食べるかを自分自身で選択すれば良かった。「アマ時代に栄養に関するセミナーを受講していたので何が体に良いかは分かっていたし、年齢を重ねて食事の管理の重要性も出てきた。体を良くするのに食は大事」。現在はパーソナルトレーナーの寺中靖幸氏の指導も仰ぎながら、栄養管理している。
ロンドン五輪で銅メダルを獲得した清水は、プロでもアジア地域の2つの王座を同時に保持している。近い将来の世界挑戦のタイミングを待っている。巡ってくるであろう世界王座奪取のチャンスを意識しながら、清水流の鍋料理で栄養管理と減量を両立していく。【藤中栄二】