55歳のJRA最年長ジョッキー柴田善臣は食べ物に好き嫌いがない。その中でも体調管理に野菜は欠かさない。若い頃に比べて食べる量は減ったが、意外にも一番食べる時は騎乗を終え、日曜日にレースを控える土曜日の夕食。翌朝に体重が減ることがあり、その分を補う意味がある。大ベテランならではの食事法を聞いた。【取材・構成=久野朗】
大ベテランには大ベテランなりの食事の取り方がある。JRAのレースは通常、土曜、日曜に開催される。レースは騎乗馬ごとに騎手の負担重量が決められているが、柴田善騎手は「若い頃の方が体重は重かった。今は太らないね」と、減量にはそれほど困らない。52キロの軽い重量にも楽に乗れる。競馬開催時は体重を増やさないため食べる量を調整し、我慢するジョッキーが多い。その中で「食べるのは土曜日だね。けっこうおなかがきつくなる」と、レース後の量が多いことを明かした。
騎乗数にもよるが、例えば夏場の土曜日にレースを終えると、翌朝に目覚めた時に体重が2キロほど減るケースがあるという。その分を蓄えるため食べる量を増やす。「体力的にも(日曜日の)後半がもたなくなる。(騎乗)パフォーマンスを落とさないのと体重維持だよね」と説明した。土曜日の夕食は、金曜夜までに騎手の入室が義務付けられる調整ルームで取る。「白米も食べるし肉も魚もだね。定食みたいなものもあって、いろいろ出てくる」とメニューはバラエティー豊かだ。
平日の食事は「サラダがないと物足りないね」と言う。夫人の手料理は色とりどりの野菜が食卓に並ぶ。「色味だよね。緑、赤、黄色とかいいじゃない」と声を弾ませた。キャベツ、レタス、トマト、カボチャ、ナスなど好き嫌いがない。それが栄養バランスを自然と摂取することにつながる。それでいて、ハイボールなどで晩酌も楽しんでいる。
常々「競馬が楽しい」と言うJRA現役最年長ジョッキーは、食事にストレスがない。「おいしいものをおいしく食べる。何でも食べるし、そういう体に産んでくれた親に感謝だね」と笑った。デビュー37年目。長く騎手を続けられる秘訣(ひけつ)には、やはり食事がある。
◆柴田善臣(しばた・よしとみ)1966年(昭41)年7月30日、青森県生まれ。競馬学校の1期生。85年3月9日中山6Rイズミサンエイで5着デビュー。1年目は12勝を挙げ新人騎手賞を受賞。93年安田記念のヤマニンゼファーでGⅠ初勝利。11年にはJRA通算2000勝を達成。今年8月8日のレパードSをメイショウムラクモで制し、55歳0カ月10日でのJRA重賞制覇は岡部幸雄元騎手の54歳0カ月31日を更新する最年長勝利記録となった。9月26日現在、JRA通算2万1615戦2312勝。重賞96勝(GⅠ9勝)2005年から10年まで騎手会長を務めた。趣味は釣り、車など。164センチ。血液型A。