腸の調子を整えること、「腸活」の大切さはよく知られています。「腸活」で乳酸菌やビフィズス菌を増やすと便通が良くなり、免疫力が上がって感染症予防になりますが、実はその効果をもたらしているのは、乳酸菌などの善玉菌が食物繊維やオリゴ糖を利用することで作られる「短鎖脂肪酸」です。

短鎖脂肪酸とは酢酸、酪酸、プロピオン酸といった小さな分子の酸性の脂肪酸で、大腸を動かすエネルギー源として使われます。短鎖脂肪酸の効果は以下のようなものが挙げられます。

短鎖脂肪酸の効果

エネルギー消費を高め、脂肪の蓄積を減らし、肥満を予防する
腸の活動が活発になる
腸のバリア機能を高め、食中毒や食物アレルギー、腸の炎症疾患やがんを防ぐ
インスリンの分泌を促すインクレチンが分泌され、糖尿病を改善する
セロトニンの分泌を促し精神を安定させ、うつ症状を改善する
免疫細胞であるTレグ(制御性T細胞)を増やし、アレルギーを改善する

このような効果があるなら「短鎖脂肪酸を直接摂れば良いのでは?」と思った方もいるでしょう。しかし、短鎖脂肪酸は口から摂取しても大腸まで届かず、小腸で吸収されてしまうので、やはり腸活で善玉菌を増やすことが短鎖脂肪酸を増やすことにつながるのです。

対して、脂肪の多い食事は、胆汁の分泌が増えることで腸管がアルカリ性に傾き、善玉菌を減らします。実際に、脂っこい食事を好む人はそうでない人よりも、善玉菌が少なかったという報告もあります。極端に脂肪を制限する必要はありませんが、腸活には脂肪の摂り過ぎも良くないようです。

また、腸活のために乳酸菌の含まれたヨーグルトを積極的に食べている人も多いでしょう。乳酸菌の豊富な食品としてヨーグルト以外に次のものがあります。ぜひ日頃の食事にとり入れてください。

チーズ
フレッシュチーズ(モッツアレラ、カッテージ等)は熟成期間が短いため、乳酸菌も少なめですが、ハードタイプの熟成チーズ(パルミジャーノ、チェダー、エメンタールなど)は乳酸菌が多めです。白カビや青カビによる熟成チーズ(カマンベール、ゴルゴンゾーラ等)にも乳酸菌は含まれています。

漬物
ぬか漬けやキムチは乳酸菌によって発酵された食べ物、発酵食品です。食塩が多く、食べ過ぎると塩分過剰になるため、豚キムチや炒飯の具材といったように調味料として使うと良いでしょう。

みそ、しょう油
涼しくなると温かいおみそ汁が飲みたくなりますが、みそにも乳酸菌が含まれています。みそ汁の具材に野菜やキノコを入れると食物繊維が一緒に摂れ、乳酸菌を増やす効果が期待できます。

甘酒やマッコリ
お酒は乳酸菌が含まれているものも多くあります。

発酵バター
生クリームを乳酸菌発酵させたものが発酵バターです。風味が良いのが特徴ですが、日持ちしないので注意してください。

納豆にも「乳酸菌を含む」とパッケージに記載されているものもありますが、基本的に納豆に含まれるのは納豆菌であって、乳酸菌ではありません。納豆菌は熱に強く、乳酸菌を増やすことも分かっているので、上記の食材との相乗効果が期待できます。

管理栄養士・今井久美