<健康診断の数値の見方>

血液検査から様々な病気のほか、栄養状態も分かります。肝機能の指標から栄養状態を評価できるので、その見方を紹介します(基準値は日本人間ドック学会による)。

総タンパク

基準値:6.5~7.9g/dl

タンパク質の摂取量が少なく、栄養状態が悪い場合は低値を示します。タンパク質は分解された後、小腸で吸収されて肝臓で再合成されるので、肝臓の機能が悪くなると総タンパクの数値も低くなります。また、腎臓の機能が落ちると、腎臓からタンパク質が出ていってしまうため、数値が下がります。

アスリートに多いのが、エネルギー不足によるもの。タンパク質がエネルギーとして使われて数値が低くなっているケースもあるので、タンパク質量を増やすだけでなくエネルギー不足になっていないか、食事を見直すことが必要です。

アルブミン値

基準値:3.9g/dl以上

アルブミンとは、血液に存在するタンパク質の中で最も多いタンパク質。約3週間前の栄養状態を表し、タンパク質不足のときは数値が下がります。総タンパク同様に肝機能障害、腎機能障害でも低下。炎症や悪性腫瘍、感染症などでも低い数値となります。

AST(GOT)、ALT(GPT)

基準値:AST=30U/L以下、ALT=30U/L以下

AST(GOT)はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ALT(GOP)はアラニンアミノトランスフェラーゼと言い、どちらも肝臓や心臓の細胞に多く含まれている酵素です。肝炎など肝機能障害の場合に上昇します。ASTは赤血球や筋肉にも多く含まれ、ALTの6倍ほど含まれていると言われます。ALTの数値が正常で、ASTとALTの比が1.0よりも高い場合(AST/ALT>1.0)、溶血(赤血球が壊れる)がないか、確認しましょう。

γ-GT(γ-GTP)

基準値:50U/L以下

γ-GT(γ-GTP)はγグルタミルトランスペプチダーゼと言い、タンパク質を分解する酵素で、肝臓や胆道に炎症があると上昇します。アルコール性肝炎の場合に特異的に上昇します。

ChE 

基準値:男性=234~493U/L、女性=200~452U/L

ChE(コリンエステラーゼ)は肝臓、膵臓、心臓に多く存在する酵素です。肝臓で作られるため、肝機能が低下すると数値が下がります。また、肝臓でのタンパク質合成能を表すため、栄養障害の場合も数値が低くなります。

総ビリルビン

基準値:0.2~1.2mg/dl

赤血球が壊れ、ヘモグロビンが分解されてできるのがビリルビンという黄色の色素です。間接ビリルビンと直接ビリルビンがあり、合わせて総ビリルビン(T-Bil)と呼びます。肝炎や肝硬変、胆石症などがあると血液中のビリルビンが増えて、黄疸が現れます。

このように、血液検査では潜んでいる病気が分かるだけでなく、日々の食事の内容や栄養状態も分かります。一般の社会人なら年に1度は健康診断などで血液検査を、アスリートは定期的に検査を受けると体の中を知ることができます。

管理栄養士・今井久美

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