寒い時期は、鍋や煮込み料理が多くなります。ここで少し面倒なのが灰汁(あく)抜きです。
灰汁の成分は様々ですが、多くはえぐみで、味を悪くしたり、変色の原因になったりするので取り除いた方が、見た目が良くおいしくなります。では、栄養面ではどうなのでしょうか? 解説していきます。
ホウレン草の灰汁はシュウ酸
ホウレン草などの青菜やタケノコ、サツマイモなどのイモ類、コーヒーなど含まれる灰汁の成分はシュウ酸です。シュウ酸には栄養面での機能はありません。水に溶けるので、切って水にさらしたり、ゆでたりすると減らすことができます。シュウ酸の多いえぐみのある野菜は、下ゆでした方が良いでしょう。
「シュウ酸を摂り過ぎると尿路結石の原因になる」と言われていますが、その理由は結石の成分で多いのがシュウ酸カルシウムだからです。ただし、日頃の食生活で摂っているシュウ酸の量で尿路結石になるわけではなく、肉など脂の多い食事、カルシウム不足、食塩の摂取量が多い、水分摂取量が少ないなど、他の要因も関与しています。
尿路結石ができやすい人は、シュウ酸の多い食品(上記以外にキャベツ、ブロッコリー、レタス、ナス、バナナ、ピーナツなど)を食べる時は、カルシウムの多い食品(乳製品や大豆製品など)と一緒に摂ると良いでしょう。腸管でシュウ酸がカルシウムと結合し、吸収されにくくなります。
肉や魚の灰汁はタンパク質
肉や魚の灰汁はタンパク質が加熱されて凝固したもので、多くは一緒に脂が混ざっています。雑味を除くためと見た目を良くするために、鍋料理でも浮いてきた灰汁を都度、取り除くことが多いと思います。
栄養面では、タンパク質なので食べても問題ありません。むしろ、取り除きすぎるとうま味まで減ってしまうことがあるので注意が必要です。
根菜の灰汁はポリフェノール
ゴボウやレンコン、ナスなどを切ると色が変色します。この灰汁はポリフェノールで、空気に触れると酸化酵素の働きで酸化し、色が変わります。切って水にさらし、空気に触れないようにすることで変色の防止になります。酸性の液(酢水など)に漬けることも酸化防止になりますが、風味に影響する場合があります。
ポリフェノールは抗酸化作用があり、摂った方が良い成分です。変色が気にならない料理であれば、水にさらさずにそのまま調理した方が、栄養的には良いですね。また、加熱によって酸化酵素の活性が止まり、変色を防ぐことができるので、切ってすぐに加熱するのが良いでしょう。
山菜の灰汁は様々
山菜にはシュウ酸、ポリフェノール以外にも、ワラビに含まれるプタキロサイド、フキやフキノトウに含まれるアルカロイドなど天然毒が含まれています。これらは水溶性なので、重曹や塩を入れた湯でゆでてから水にさらすことで、安全に食べられるようになります。栄養面からも山菜は灰汁抜きが必要です。
このように灰汁の成分を理解することで、灰汁抜きの方法や程度も変わってきます。安全であることはもちろん、おいしく、栄養を減らさない食べ方をしたいですね。