「夜遅い時間に食べると太る」。

なんとなく分かっているものの、その理由を明確に理解していない方も多いのではないでしょうか。今回は、その科学的根拠を解説します。

消化に時間がかかる

食物は、胃で胃酸により分解され、十二指腸で消化酵素の膵液(すいえき)と混ざり、小腸に移動して消化吸収されます。胃の滞留時間は平均2~3時間、揚げ物など油脂の多い食事になると4~5時間と、時間がかかります。

食事が夜遅くなると、消化吸収が始まる頃は睡眠中の場合がほとんどで、血液中に糖や脂肪が取り込まれる時は、体をほとんど動かさない状態です。血液中に取り込まれた糖や脂肪は使われなければ、脂肪細胞に取り込まれ蓄積されるため、「太る」ということになります。

食事が夜遅く、すぐに寝てしまうと消化が遅くなる
食事が夜遅く、すぐに寝てしまうと消化が遅くなる

夜間は脂肪合成が活性化

脂肪を合成し、脂肪を貯蔵するなど脂質代謝を調節する機能を持つタンパク質として「BMAL1(ビーマルワン)」があります。時間帯によって増減し、午後6時から朝4時頃に活性化され、特に午後10時から午前2時がピークになります。つまり、この時間に吸収された食べ物は脂肪合成が活性化され、脂肪としてより蓄積されやすく、太りやすくなるのです。

摂取量が多くなりがち

日本人は一般的に1日3食の食事のうち、夕食から摂るエネルギーが多く、1日の摂取エネルギーのうち約45%を夕食から摂取しているというデータがあります。夕食量が多い上、さらに夕食後に間食した場合、夕食以降に摂るエネルギーが1日の摂取エネルギーの50%以上、1000kcalを超えることもあります。夕食後、テレビやパソコン、スマホなどを見ながらお菓子をつまんでいると「気付いたらスナック菓子1袋を食べていた」と、食べ過ぎることもあります。

食事の後、スマホなどを見ながらスナック菓子を食べているとエネルギーの摂りすぎにも
食事の後、スマホなどを見ながらスナック菓子を食べているとエネルギーの摂りすぎにも

飲酒で食物の代謝が後回し

飲酒する人は、さらに注意が必要です。お酒を飲むとアルコールが先に吸収され、肝臓で無毒化するために処理されます。それが終わってから肝臓で食物の代謝をすることになり、食べたものが代謝されるのが遅くなります。また、飲酒すると一時的に血糖値が低下するため、酒を飲んだ後に糖質を多く含むラーメンなどが食べたくなるのです。

飲んだ後にラーメンを食べたくなるのにも理由があった
飲んだ後にラーメンを食べたくなるのにも理由があった

飲酒すると食欲が増し、おかずやつまみを食べ過ぎてしまうことも多いようです。飲酒時は白米を食べず、おかずだけにする方も多くいますが、アルコールとおかずが増えたことで、結局、エネルギー過剰になっていることがあります。

朝食欠食で自律神経に乱れ

夕食の時間が遅く、量が多い場合、消化吸収に時間がかかるため、朝に空腹感を感じないことが多く、朝食欠食の原因になります。朝食をとることは体内時計を整える要因になっているので、欠食することで自律神経が乱れるだけでなく、体温が上がりにくく、基礎代謝も低くなります。

自分に当てはめて生活改善

「夜遅い時間に食べると太る」理由は分かりましたか。その根拠が分かると、どうしたら太りにくくなるのか、自分の生活に当てはめてみて対策が立てやすくなりますね。

注意して欲しいのが、やせていて体重を増やしたい人。「夜遅く食べると太る」を逆にとらえ、太りやすい食生活をして増量してしまうと、余程運動しない限り、脂肪ばかり増えることになり、体重が標準だとしても食後血糖値や中性脂肪が高くなり、糖尿病や脂質異常症になりやすくなります。

管理栄養士・今井久美