ここまで、加齢臭やミドル脂臭、さらに口臭と体臭の原因についてお伝えしてきました。今回は「病気と臭いの関係」についてお話しします。
病気になると、体内の代謝に変化が生じ、臭いの原因となる物質が生成されたり、増えたりして特有の臭いを発することがあります。
肝機能や腎機能の低下とアンモニア臭
体内で消化吸収されたアミノ酸はアンモニアに変わりますが、アンモニアは有毒のため、肝臓で無毒の尿素に変えられて尿へ排泄されます。しかし、肝機能が低下すると、この無毒化が十分に行われなくなるため、血中のアンモニア濃度が上がります。その結果、汗や口からツンとしたアンモニア臭が漂うことがあります。
本来、尿素はアンモニア臭くありませんが、排泄された尿素は細菌によって分解されて、再びアンモニアに変わるため、分泌、排泄後しばらくすると、アンモニア臭が強烈になります。
アンモニアの尿素変換は腎臓でも行われます。腎臓は血液を濾過(ろか)する臓器のため、機能が低下すると、アンモニアや尿素の尿への排泄が十分に行えなくなることで、血中の尿素やアンモニア濃度が上がるため、肝機能低下と同様に汗や口からアンモニア臭がするのです。
また病気までいかないまでも、タンパク質の過剰摂取、飲酒、精神的なストレスや肉体的疲労により、肝機能が低下した場合もアンモニア臭がすることがあります。
胃腸機能の低下と硫黄臭
胃や腸の機能が低下すると、食べ物の消化吸収が十分に行われなくなります。そのため、食べ物が腐敗し、異常発酵することや悪玉菌が増えることでガスが発生。その結果、口臭や汗が硫黄のような腐敗臭になることがあります。
便秘の時も同様です。どんなニオイかは、便秘の時のオナラがくさいことから想像しやすいでしょう。
糖尿病とケトン臭
糖尿病が悪化すると、ブドウ糖をエネルギーに利用できないため、脂肪がエネルギー源として利用され、ケトン体(アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸)が肝臓で生じます。ケトン体そのものもエネルギー利用されますが、急激にケトン体が増加することで、口臭や汗が熟した果物のような甘酸っぱい臭い「ケトン臭」となることがあります。
糖尿病だけでなく、急激な減量、厳しい糖質制限によってもこの臭いがすることがあり、「ダイエット臭」とも言われます。また、加糖飲料の飲み過ぎなどによる高血糖によってもケトン臭がすることがあります。
ケトン体が血中に増加すると、血液が酸性に傾くアシドーシスという状態になり、脱水になります。ケトン臭がした場合、水分摂取に努めましょう。
その他のニオイ
細菌感染によって化膿した場合や、ガンなどによる細胞の壊死がある場合も特有の臭いがします。パーキンソン病ではムスクのような臭いがするとも言われています。
乳児のスクリーニングで発見されるメープルシロップ尿症など先天性代謝異常症では、代謝障害からくる体臭や尿に独特な臭いがあります。
体臭、口臭、尿の臭いの変化は体の不調が原因のことが多いため、医療機関の受診をおすすめします。日頃から「体内からの臭い」を意識し、食事の内容や生活習慣を整えることも大切です。