<脂質の話・上>

青魚やナッツ類、亜麻仁油やエゴマ油に含まれるオメガ3系の油が、「体に良い油」として大人気です。しかし、そもそも「オメガ3」って何? と今ひとつ分からない方もいるのではないでしょうか。

脂質について2回に分けて整理し、何をどれぐらい摂ったら良いのかを考えていきましょう。今回は、脂質の種類と特徴についてお話ししていきます。

脂質の種類

脂質は炭水化物、タンパク質に並ぶ3大栄養素の1つです。大きく分けて、「飽和脂肪酸」「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」に分けられ、多価不飽和脂肪酸はさらに「n-6系」と「n-3系」に分けられます。この「n-3系」が「オメガ3」と呼ばれるものです。それぞれについて説明していきましょう。

脂質の特徴と含まれる食材

飽和脂肪酸
・常温で固体
・LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を上げる
・肉の脂身やバターなどの乳製品、ラード、ココナッツミルク、ヤシ油などの熱帯地域で採れる食材などに含まれる

一価不飽和脂肪酸
・常温で液体
・酸化されにくく、熱にも強い
・LDLコレステロールを下げる
・オリーブオイル、ココナッツオイル、アボカドオイル、米油、ひまわり油、べに花油、なたね油などに含まれる

多価不飽和脂肪酸
・常温で固形
・酸化されやすい
・LDLコレステロールを下げる
・多く含まれる食材は以下の表を参照

リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸、α-リノレン酸、EPA(イコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)は体内で作り出すことができない必須脂肪酸です。

総脂質量の摂取目標

食事摂取基準(2020年度版)では、どの年代も摂取エネルギーの20~30%を脂質で摂取することを目標としています(総脂質量)。

1日に2000kcalのエネルギー摂取が必要な人の場合、脂質でとる割合は次のようになります。

 20%…2000×20÷100=400kcal
 30%…2000×20÷100=600kcal
※脂質で400~600kcalを摂取するのが目標

脂質は1gあたり9kcalのため、量を求めるとすると次の計算となります。

 400÷9≒44.4
 600÷9≒66.6
※1日におよそ45~66gの脂質をとればいいということになります。

飽和脂肪酸の摂取目標

飽和脂肪酸の摂取目標量は、18歳以上の男女とも摂取エネルギーの中の7%以下。過剰摂取しないよう気を付ける必要があります。

1日に2000kcalが摂取目標の18歳以上の場合、次の計算のように15g以下に抑える必要があります。

 2000×7÷100=140kcal
 140÷9≒15.5g

飽和脂肪酸約15gは、バターなら24g相当のため、洋菓子やデニッシュ系の菓子パンを食べれば、軽く超える性があります。また、豚バラ肉100gでは脂質を35.4g、飽和脂肪酸を14.6g含むので、脂身の多い肉を好む人も脂質や飽和脂肪酸の過剰摂取になりがちです。

多価不飽和脂肪酸の目安量

多価不飽和脂肪酸の目安量は、次のように設定されています(「目安量」は、この量を摂っていれば、不足の報告はないという量)。

1日に2000kcalが摂取目標の18歳女性の場合でそれぞれ見ていきましょう。

n-6系脂肪酸
 2000×8÷100=160kcal
 160÷9≒17.7g

n-3系脂肪酸
 2000×1.6÷100=32kcal
 32÷9≒3.5g

ちょうどエゴマ油小さじ1杯分が4g程度に当たります。「毎日小さじ1杯分のエゴマ油をとる」と良いと言われる理由はそこにあります。

脂質のバランス

また、脂質の量だけでなく、バランスも重要視されています。

飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸=3:4:3

さらに多価不飽和脂肪酸は「n-3系:n-6系=1:4」にするのが望ましいとされています。

これらを計算しながら食事を摂るのは難しいですが、油を使った加工品の食べ過ぎを控え、食事から摂らなければならない必須脂肪酸(n-3系、n-6系)の摂取を意識すると、量もバランスも目標量に近づくでしょう。

次回のコラムでは、n-3系の脂肪酸をどうのように、どれくらい摂ったら良いのかをお話しします。

参考:日本人の食事摂取基準(2020年版)

管理栄養士・今井久美

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