様々な食材の価格が高騰している今、価格の安い「超加工食品」を選ぶことが増え、摂取量の増加が懸念されています。ところで、「超加工食品」「最小加工食品」とは何を指すか、ご存じですか。

超加工食品、最小加工食品とは

「超加工食品」とは、一般の家庭で使用されない硬化油(マーガリンやショートニングなど)・転化糖(ブドウ糖果糖液糖など)・香味料・着色料、乳化剤・保存料などの添加物を加え、工業的な過程で作られる加工食品のことです。例えば、工場で大量生産された菓子パンや惣菜パン、ピザやパイ、スナック菓子、ビスケットやクッキーなど菓子類、ミートボールやチキンナゲットなど肉加工品、インスタントラーメン、清涼飲料水などが含まれます。

一方で、「最小加工食品」とは、無塩ナッツや干し芋、プレーンヨーグルトや納豆など素材を生かし、加工を最小限にした食品のことです。ただし、ヨーグルトもフレーバーヨーグルトになると超加工食品に入ります。

高カロリーで脂質と塩分も多い

超加工食品は保存期間が長く、常温で保存できるものも多いうえ価格も安いため、日本だけでなく世界の多くの国で消費量が増加しています。コロナ禍で自宅にいる時間が増えたことや買い物の頻度を減らしたことも摂取量の増加に関与しています。ただし、高カロリーで脂肪と塩分が多く、タンパク質や食物繊維は少ないものが多いため、過剰に摂取すると高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、がんなどのリスクが上昇すると報告されています。

超加工食品は、動脈硬化を促進する飽和脂肪酸だけでなく、トランス脂肪酸や血糖値を上げる糖類も多く含まれていることから、糖尿病や脂質異常症、心筋梗塞や脳梗塞を経験した人は摂取を控えた方が良いでしょう。

1日1食、食べ続けると…

さらに、認知症の発症リスクが高まるという研究報告もあります。天津医科大学(中国)の研究で、超加工食品を摂取量ごとに4群(1番少ない群は1日平均225g=摂取量の9%、1番多い群で814g=摂取量の28%)に分けて追跡調査を実施。その後に認知症を発症した人(追跡期間の中央値10年、年齢、性別、家族歴など他の認知症因子を調整)を調べたところ、超加工食品の摂取量が10%増加すると認知症発症リスクが25%高くなり、超加工食品の10%を未加工、または最小加工食品に置き換えることで認知症発症リスクが19%低下したとの結果を発表しています。

平たく言うと、1番少ない群は超加工食品を1日1回のおやつ程度、1番多い群では約1食分を10年続けて食べたところ、おやつ程度の人に比べ、1日1食食べ続けた人は認知症の発症率が約1.56倍高まったということです。

昼食に冷凍食品や惣菜パン、カップラーメンを利用している人は注意が必要ですね。おやつを果物や無塩ナッツに変える、昼食を手作り弁当に変える、自宅からおにぎりを持参し、おかずだけを購入するなどの一工夫で、認知症発症リスクを下げることができます。

超加工食品は、なぜ太りやすいのか

また、米国立衛生研究所(NIH)の国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所(NIDDK)の調査では、20人の健康な成人男女が2週間ごとに終日、超加工食品と最小加工食品を食べた場合、超加工食品を食べた期間は約500kcal摂取量が多く、食べるスピードも速く、体重は0.9kg増加したと報告しています。超加工食品を食べた期間は、食欲増進ホルモンであるグレリンの値が上昇し、最小加工食品を食べている期間は食欲抑制ホルモンであるPYY(ペプチドYY)の値が上昇したこともわかっています。おそらく、超加工食品はあまり咀嚼せずに食べられるものが多いため、食べるスピードが速くなってグレリンの分泌が上昇する一方でPYYの分泌が上がらないため、食べ過ぎてしまうのではないでしょうか。

購入時に食品表示を確認する意識づけ

超加工食品は便利ですし、危険な食べ物ではありませんが、摂取量を増やさないように注意することが大切です。買い物の時に食品表示を確認し、使用原材料に分からないものが使用されていた場合は、調べるようにしましょう。食品添加物は、安全性を保証する範囲の量が使用されていますが、摂りすぎた場合、健康に全く影響がないかは疑問が残るところです。

食品加工は、食材を安全においしく食べるための工程ですが、加工の段階で調味料や添加物が使用されるだけでなく、有害性が疑われる成分が生じる場合もあります。健康な生活を維持したいのならば、手軽で便利で価格の安いものばかり食べるのではなく、食材の風味を生かし、シンプルな加工のものを食べるよう心がけると良いでしょう。

管理栄養士・今井久美