学生時代に運動部に所属していたり、運動習慣があった人は筋肉量が多く、健康的なイメージです。しかし、中年になって気がつけば、がっちり太ってしまったという人はいませんか。「元体育会系」の人こそ、生活習慣病になる危険性があるのです。その理由と対策を説明します。

大食いで早食いで肥満

運動部に所属していた頃は成長期も重なり、一生の中で最も必要エネルギーが多い時期だったはずです。「体を大きくしろ」「食べろ食べろ」などと言われ続け、1日4000kcalほど摂っていた人も少なくないでしょう。

社会人になって運動する時間が減り、必要エネルギーが減っても「昔の感覚」は失われず、身についた食習慣を簡単に変えることはできません。食べ過ぎ、飲み過ぎれば、当然太ります。運動部時代、均整のとれたいわゆる「良い体」だったのは、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが取れていただけで、太らない体質だというわけではないのです。

また、運動部時代は短時間に急いでたくさん食べていた人も多いと思います。この早食い習慣も、中年になっても変えられない人は多くいます。早食いは過食につながり、肥満になります。

要注意!「元体育会系」は生活習慣病になりやすい、その理由と対策

自分は「体力がある」と過信

10代の頃、激しい運動をしていた人は自分の体力に自信があるからか、つい無理をして、残業をし過ぎたり、睡眠時間を削って頑張ったりしてしまう傾向もあります。睡眠不足やストレスは血圧を上げますし、遅くまで起きている人は肥満の割合が高いといった報告もあります。

体重が増えれば高血圧だけでなく、糖尿病や脂質異常症のリスクが上がりますが、「自分は健康だ」と過信する傾向にあるので生活を見直さず、悪循環に陥りやすくなります。

飲み会多く飲酒量も多い

コロナ禍で減ったとはいえ、元運動部の人は飲食の機会が多く、勧められるままに飲み、飲酒量が多くなりがちです。外での飲食は飲酒量だけでなく、食事量や摂取エネルギー、食塩の摂取量も多くなります。飲酒は高血圧、脂質異常症、糖尿病、肝臓病、がんなどの原因になるのです。

定期的に体重測定、今の自分を知る

生活習慣病を予防するためには、まず、体重をコントロールすることです。私のところに栄養相談に来る「元体育会系」の方も、「若い頃に比べて食べる量は増えていないのに体重が増える」「以前より体重が減りにくくなった」とよく言っていますが、体重が増えるということは消費エネルギー量が減っており、必要エネルギー以上に摂取エネルギーが多いから。つまり、食べ過ぎ、飲み過ぎということです。

食事量は、他人や以前の自分と比較するのではなく、今の自分に照らし合わせることが大切です。体重を定期的(毎日が理想、最低週1回以上)に測定し、現状を把握しましょう。体重測定は、かかる費用が最も安価で体にも負担がかからず、時間もかかりません。

体重が増えていたら食事量や活動量を調整しましょう。減量するには、余分な摂取エネルギーを単に減らすだけでなく、マイナスにまで減らす必要があります。継続的に運動することも大切です。早めに調整することで体重コントロールが容易になり、自己効力感(目標達成できるという自己認知)も高まるので良いことずくめです。

長年の生活習慣を変えることはたやすくはありませんが、運動部時代に培った精神力があれば、きっと体重コントロールもできるはず。かつての格好良かった自分を思い返し、生活を整えていきましょう。

管理栄養士・今井久美