健康意識の高い人は特に、「体に良い」と言われる食品や栄養成分への情報感度も高いと思います。日々、新しい情報がネットなどで話題になっており、「健康食品」を食生活に取り入れている方も多いでしょう。

一方で、「効果がなかった」と期待外れだったり、「肝臓の数値が急に上がった」など逆効果だったという報告を受けることも多くあります。体に良いと思って始めて残念な結果にならないために、健康食品についての正しい知識が必要です。

「健康食品」は健康に良いもの?

そもそも「健康食品」とはどういったものか、正しく理解していますか?

※消費者庁「健康食品5つの問題」リーフレットより抜粋
※消費者庁「健康食品5つの問題」リーフレットより抜粋

「健康食品」と呼ばれるものに法律上の定義はなく、医薬品以外で口から摂取するもので、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指しています(上図参照)。実際に健康効果が期待できると確認されているものと、されていないものがあるわけです。

※消費者庁「健康食品5つの問題」リーフレットより抜粋
※消費者庁「健康食品5つの問題」リーフレットより抜粋

トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品

そのうち国の制度に基づき、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たしたものを「保健機能食品」と呼び、「トクホ」と呼ばれる特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品に分けられます。トクホは「おなかの調子を整える」「脂肪の吸収をおだやかにする」など、特定の保健の目的が期待できる(健康の維持及び増進に役立つ)食品で国が表示を許可したもの、栄養機能食品は国の定めた栄養成分について一定の基準を満たす場合にその栄養成分の機能を表示することができるもので、機能性表示食品は事業者の責任においてその機能を表示しているものとなります。

ただし、食品のパッケージに機能の表示があったとしても、保健機能食品は医薬品ではないため、明確な効果が得られるわけではありません。例えば、「脂肪の吸収をおだやかにする」と表示する根拠となった研究データを確認すると、100kcal未満に相当する程度(油で大さじ1杯)の少量でしかなく、揚げ物を毎日のように食べる人やスナック菓子を1袋食べるような人には効果は感じられないでしょう。逆に、特定保健用食品などを摂っているからと安心して、揚げ物やスナック菓子の摂取量が増え しまって本末転倒です。

「その他」は栄養機能成分の保証なし

また、保健機能食品以外の「その他の健康食品」は、機能性食品、健康補助食品、栄養補助食品、栄養強化食品、栄養調整食品、健康飲料、サプリメントなど表示していますが、栄養機能成分を保証する法律がありません。食品表示や食品衛生などの管理目的の表示やエネルギー、タンパク質、脂質、炭水化物、ナトリウム(塩分)の栄養表示の義務はありますが、肝心な機能成分の保証義務がないのです。

食材は、産地や収穫時期によっても栄養成分は変化します。有効だと期待できる成分に表示義務がなければ、表示もされず含有量も不明なものもあります。

さらに注意したいことは、長年食べてきた一般食品や保健機能食品は安全性が確保されていますが、「その他の健康食品」にはアレルギー症状を含む健康被害などの危害発生の可能性があるということです。「オーガニック」と記載されていても安全というわけではありません。

入手の前に本当に必要かどうか

今では簡単に店頭や、ネットなどの通販で健康食品を購入できます。サプリメントの利用は大人だけでなく、学生から幼児まで拡大していますが、安易に利用する前に次のことをチェックして、本当に必要かどうか考えてみましょう。

(1)摂取エネルギーは適正か
→体重で評価、多ければ食事で減らす、運動するなどの改善できないか
(2)栄養バランスは整っているか
→炭水化物、タンパク質、脂質のバランスはどうか*
(3)体調不良(便秘など)がある場合、食事で改善できないか
(4)食事を改善しても不足してしまう栄養成分があるか
(5)体質や遺伝などでなりやすい症状や病気があり、より気をつけたい栄養成分があるか

使用リスクがないか事前にチェック

それでも、健康食品を使用することにメリットがあると考えるなら、次のこともあらかじめチェックしておきましょう。

□有効成分は自分の体調や服薬している薬にマイナスに働かないか
□アレルギー成分が含まれていないか
□有効成分の科学的根拠が示され、含有量が明記されているか
□成分が過剰量にならないか
□医薬品でないのに、「治る」などの表示がされていないか

東京都が法令違反の可能性が高いと思われる健康食品を調査した「令和4年度健康食品試買調査結果」では次のような報告がありました。

・販売店で購入した製品では、42品目中24品目に不適正な表示・広告があった
・インターネット等の通信販売で購入した製品では、83品目中79品目に不適正な表示・広告があった
・1製品から医薬品成分が検出された

これらの調査結果も参考にして、健康食品を利用する場合は安全かつ補助的に使用することが大切です。

参照:国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所
「健康食品」の安全性・有効性情報
厚生労働省 いわゆる「健康食品」のHP
東京都健康安全研究センターHP

管理栄養士・今井久美