最近忘れっぽくなった、新しいことが覚えられなくなったと感じることはありませんか? 記憶力の低下は40代頃から始まり、さらに60代頃から認知機能の低下が見られるようになります。
いつまでも脳を元気に保ちたいものですが、なぜ記憶力は低下するのでしょうか。「うっかり」物忘れの要因と、それを少しでも防ぐためのポイントをお伝えします。
記憶力低下の原因
①性ホルモン分泌の低下
脳の「海馬」という記憶を司る器官では、男性ホルモン(テストステロン、ジヒドロテストステロン)や女性ホルモン(エストラジオール)を合成していることがわかっています。女性ホルモン(エストロゲン)補充療法が海馬の働きを活性化させるという研究結果や、男性ホルモン(テストステロン、ジヒドロテストステロン)が脳の海馬神経のシナプス(神経細胞間に形成される、シグナル伝達などの神経活動に関わる接合部位)を増強するという研究報告があるように、性ホルモンの分泌の低下によって記憶力も低下しやすくなるのです。
男女とも更年期症状の1つに「物忘れ」がありますが、これも性ホルモンに影響されるものです。
②過度の飲酒
飲酒量と脳の萎縮の程度には正の相関がみられます。過度の飲酒は脳の萎縮を促進するため、脳の機能低下を招き、記憶力や認知機能の低下につながります。飲酒量は1日1合程度の適量にとどめましょう。
③疲労
疲労と記憶力の関係も密接です。長時間の集中作業や睡眠不足などによる疲労によって注意力が低下し、情報の処理や記憶の固定に問題をきたすことがあります。
④ストレス
強いストレスを受けると、コルチゾールというストレスホルモンの分泌量が増加し、脳の海馬に作用し、記憶力の低下につながります。
⑤動脈硬化
脳の血管の動脈硬化が脳機能を低下させることはよく知られており、認知症の原因にもなっています。
記憶力の低下を防ぐために
①n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取
「オメガ3」とも呼ばれる「n-3系多価不飽和脂肪酸」の中でも、DHA(ドコサヘキサエン酸)が脳の健康と機能にとって重要な役割を果たしています。DHAは脳の神経細胞の細胞膜に多く存在しており、神経細胞の正常な機能に関わっています。特に、認知機能を担当する脳の灰白質に高い濃度で存在しています。
DHAは酸化しやすい脂肪酸のため、サプリメントよりも魚から摂ることをすすめます。
②運動
運動することによって、海馬の男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)の合成が増加し、神経新生(神経細胞の産生)が増えるという研究結果があります。つまり、運動によって記憶力が良くなる可能性があります。
記憶力を低下させる要因を避ける生活を心がけ、魚を食べて運動をし、十分に睡眠をとることも大切ですね。