最近、美容や若返りに効果があるとして話題の「NMN」をご存じでしょうか。

加齢とともに減少、増やすカギは

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、細胞内のエネルギー生産や代謝に関与するビタミンB群のナイアシンの一種で、アンチエイジングを実現するために重要な遺伝子を活性化させる補酵素「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」を作るために必要な物質です。NAD+はミトコンドリアにおけるエネルギー生産や細胞の老化プロセスに関与すると考えられており、エイジングケアにとって重要な成分とされています。

NMNもNAD+も、私たち人間をはじめとする多くの生物内に存在していますが、年を重ねるとともに減少し、いわゆる老化現象が起こってきます。NMNを点滴やサプリメントで摂取すると、代謝を亢進させて、加齢とともに減少するNAD+を増やすことができるため、肉体や脳、肌などの老化を遅らせる可能性があると期待されているのです。

材料はナイアシンとタンパク質

NAD+の材料は、ニコチンアミド(ナイアシンアミド、ニコチン酸アミド)、ニコチン酸、トリプトファンです。

ニコチンアミドは体の酸化還元反応に関わっており、皮膚や粘膜を正常に保ち、血流を改善する作用があります。皮膚炎や湿疹、しもやけや肩こり改善の医薬品にもなっていますし、しみや肌荒れの改善、美肌効果があるとして化粧品にも使われています。

出典:国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報」
出典:国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報」

ニコチン酸を多く含む食品は、肉類、レバー、豆類などです。トリプトファンは必須アミノ酸で大豆製品、乳製品、ナッツ類に多く含まれています。主要栄養素で言うと、ニコチンアミドとニコチン酸はナイアシン(ビタミンB3)ですし、トリプトファンはタンパク質ですので、バランスの整った食生活をしていれば不足することはありません。

不足する可能性のある生活とは

ただし、先にも述べたように、残念ながら加齢とともに減少します。肝臓で代謝されるので、アルコールの多飲者や肝機能が低下している人は不足する可能性があります。また、タンパク質の摂取量が少ない人、消化管の機能が低下し消化吸収能が低下している人、ダイエットをしている人、妊婦、肉体疲労が強い人は不足することが考えられるので、まずは食事を意識してみましょう。ナイアシンには食事摂取基準で耐容上限量があるので、過剰摂取には注意してください。

さて、NMNを点滴やサプリメントで補充する効果については現在、ヒトに対しての研究が進められているところです。効果が認められれば、医薬品として認められる可能性もあるので、今後の研究に期待したいですね。

参照:国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品の安全性・有効性情報」

管理栄養士・今井久美