健康情報がインターネットやSNSなどで簡単に入手できるようになりましたが、それが信頼できるものか、自分にとって適切かどうかを自分で判断しなくてはならなくなりました。せっかく「体に良い」と思って実践したことが、逆効果な場合もあります。情報に飛びつく前に、自分の今の食生活を分析し、その結果を踏まえて足りない栄養素を加えたり、過剰なものを減らしたりすることが大切です。

オメガ3脂肪酸、中鎖脂肪酸

最近は「糖質制限」「タンパク質摂取」を推奨し、油脂に関しては「良い油」「悪い脂」を比較して、「良い油の摂取」をすすめる傾向が強くあります。

良い油として、青魚に多いDHAやEPA、アマニ油やエゴマ油に多いα-リノレン酸などn-3系多価不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸)がよく紹介されています。動脈硬化の予防、抗炎症作用など様々な効果が期待されるとして、魚をたくさん摂れない場合はサプリメント、もしくは食事にアマニ油やエゴマ油をプラスすることで摂取量を増やせると書いている記事も多くみられます。

また、ココナッツオイルに多く含まれる中鎖脂肪酸は素早くエネルギーになるため、脂肪として蓄積されにくいことから、「痩せる油」として紹介しているものもあります。

体によい油も油、脂質過多に注意

とはいえ、n-3系多価不飽和脂肪酸も中鎖脂肪酸も、油です。エネルギー消費が多く、十分にエネルギー摂取ができないアスリートや高齢者、タンパク質制限をしている腎臓病の人などが追加摂取することは効果的な場合がありますが、減量のためにわざわざ油を摂るというのはどうなのでしょうか。

日本人の食事摂取基準2020年では、摂取エネルギーに対する脂肪エネルギー比率の目標量を20~30%にしています。しかし、平成元年の国民健康・栄養調査の結果を見ると、脂肪エネルギー比率の平均は、20歳以上で30.4%(男性29.5%、女性31.1%)、成人男女の半数以上(男性50.6%、女性57.9%)が30%以上でした。30%以上の人が男性よりも女性の方が多いのは、主食量が少なく全体の摂取エネルギーが少ないこともありますが、菓子や乳製品の摂取量が多いことも原因です。

「体に良いから」とナッツやゴマを積極的に食べ、「腸活や骨粗鬆症予防」で乳製品を摂取することも脂肪過剰につながるケースがあります。以前、ゴマが流行した時に私が行った調査でも、「ゴマを意識して摂取している人の方が脂肪エネルギー比率が高い」という結果になりました。

今の食事に加えて何かをプラスしようと考えるとき、過剰摂取にならないかを分析し、さらに過剰にならないように今摂っている食品と置き換えることも検討しましょう。

例えば、「肉を減らして魚を増やす」「ドレッシングをアマニ油と塩・コショウに変える」「洋菓子やアイスクリームをココナッツミルクを使ったおやつに変える」など、置き換えることで摂取エネルギーや脂肪エネルギー比率を上げずに、体に良いと言われる食品を取り入れることができます。意識が高いがゆえに、過剰摂取にならないよう注意が必要です。

管理栄養士・今井久美