皮下脂肪、内臓脂肪という言葉は聞いたことがあると思いますが、「異所性脂肪」という言葉を聞いたことありますか?
異所性脂肪とは、通常は脂肪が蓄積されない臓器や組織、例えば肝臓、心臓、膵臓、筋肉、骨格筋などに蓄積する脂肪のことです。
脂肪肝も異所性脂肪の1つです。脂肪細胞が飽和状態に達すると、本来あるべきところではない異所的な場所に脂肪が蓄積されるようになります。
異所性脂肪が蓄積すると、様々な健康問題を引き起こし、痩せにくくなる傾向があります。
異所性脂肪が蓄積する原因
異所性脂肪が蓄積する原因は様々です。過剰なカロリー摂取、高脂肪や高糖質の食事、内臓脂肪が蓄積したことによるインスリン抵抗性(インスリンは十分な量が作られているけれども、効果を発揮できない状態)、さらに運動不足、加齢や更年期などによる脂肪のつきやすい部位の変化、遺伝的要因などがあります。
減量を頑張っているのに痩せない人は、異所性脂肪が多い可能性があります。
異所性脂肪が多いと痩せにくい理由
異所性脂肪が多いことで痩せにくくなる理由は主に6点あります。
1、インスリン抵抗性の進行
内臓脂肪だけでなく、特に肝臓や筋肉に蓄積された脂肪がインスリン抵抗性を引き起こします。これにより、血糖値をコントロールする能力が低下し、エネルギーを効率良く利用できなくなります。
2、代謝の低下
肝臓に脂肪が蓄積すると、肝臓の機能が妨げられ、代謝が低下します。それによりエネルギー消費が減ります。
3、脂肪細胞の機能異常
脂肪細胞自体の機能が異常をきたし、脂肪の蓄積と分解のバランスが崩れます。これにより、脂肪細胞が効率的に脂肪を分解できなくなり、脂肪燃焼が阻害されます。
4、慢性的な炎症
体内で慢性的な炎症が起きやすくなります。この炎症は、ホルモンバランスに影響し、さらに代謝を低下させます。
5、ホルモンの乱れ
インスリン、レプチン、アディポネクチンといった脂肪代謝に関与するホルモンの働きが乱れ、脂肪の蓄積と分解のバランスが崩れることで痩せにくくなります。さらに、加齢や更年期に伴うホルモンの変化(エストロゲンやテストステロンの低下)も、この影響を強めます。
6、筋肉への影響
筋肉に脂肪が蓄積すると筋肉自体の働きが低下し、エネルギー消費が減少します。
異所性脂肪を増やさない、減らす方法
異所性脂肪が蓄積されている可能性が高い人、異所性脂肪を溜め込みたくない人は、次の予防や対策を実践してみください。
1、適切な食事管理
全粒穀物、野菜、果物、豆類など、血糖値の急激な上昇を防ぐ低GI(グリセミックインデックス)食品を選び、食物繊維の摂取を増やすと、インスリン感受性が向上して脂肪の蓄積を防ぎます。
食事を一度に大量摂取することを避け、3食バランスよく摂ることが、血糖値の安定化とインスリン感受性の改善につながります。とりわけ、高糖質・高脂肪の食事は異所性脂肪を増やしやすいのでバランスの取れた食事が大切です。
脂肪の多い肉や洋菓子に多い飽和脂肪酸を減らし、抗炎症作用のある魚やナッツに含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸や抗酸化作用のあるポリフェノールやビタミンA、C、Eを摂るようにしましょう。
2、運動の増加
有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせが推奨されます。週に3回以上、30分から1時間程度の運動を継続して行うことが重要です。
3、睡眠とストレス管理
睡眠不足はホルモンバランスを乱し、脂肪代謝に影響します。1日7時間時間以上の質の高い睡眠を確保しましょう。
ストレスが増加するとコルチゾールというホルモンが分泌され、脂肪が蓄積しやすくなります。深呼吸、瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法を取り入れることが効果的です。
4、節酒
アルコールの過剰摂取は、異所性脂肪の増加につながります。特に、脂肪肝を防ぐためにアルコールの量を制限することが大切です。
5、体重管理
肥満は異所性脂肪の蓄積に直結するため、体重を適正範囲に保つことが重要です。BMIが基準内でも、痩せていた人が10kg以上増加した場合や、短期間に急激に体重が増えた場合は体脂肪率が高い場合があります。
異所性脂肪がついているか確認する方法
自分の体に異所性脂肪が蓄積されているかどうかを知る簡単な方法は、腹囲がメタボの基準以上かどうか。基準以上であれば内臓脂肪が蓄積されている場合が多くいます。
また、同時に脂肪肝になっている人が多くいます。この場合、中性脂肪の蓄積が主で、エコーで調べることもできますが、血液検査では肝臓のALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)が高くなります。肝臓のALTが高い場合、他の臓器にも異所性脂肪として蓄積されている可能性が高いです。
体脂肪率をチェックするのも簡単な方法です。年代ごとの基準を上回っていると、内臓脂肪や異所性脂肪が蓄積されている場合が多いです。
体脂肪を減らすペースは、3カ月で体重の3%、半年で5%程度の減量からです。50kgの人なら3カ月で1.5kg減を目指し、体脂肪率を適正に管理しましょう。脂肪を減らすには時間と努力が必要です。諦めずに頑張りましょう。