<体力の正体は筋肉/第5章:下半身と体幹の筋肉をきたえなさい(1)>

なぜ下半身や体幹の筋肉なのか

年齢を重ねたり体を動かさなかったりして、筋量が減少し筋力が低下しやすいのは、上半身よりも、下腿三頭筋、大腿四頭筋、ハムストリングスといった下半身の筋肉のほうが著しく、それが「老化は脚から」といわれる所以であると書きました(第3章:使わないとすぐに衰える筋肉、下半身の方が減りやすい)。

さらに加えて、大殿筋、腸腰筋、脊柱起立筋といった直立姿勢を支える体幹の筋肉も、体を動かさなければ例外なく衰えてしまいます。そうなると、歩くのにも支障が生じ、転倒しやすくなります。

「いつまでも動ける体」をキープしたいのであれば、これらの筋肉をきたえることが重要です。

あなたの体力は今どのくらい?

トレーニングに入る前に、まずは、筋力と全身持久力(心肺体力、スタミナ)を測って、あなたの体力が今どのくらいあるのかをチェックしてみましょう(『健康づくりのための運動指針2006~生活習慣病予防のために~』厚生労働省運動所要量・運動指針の策定検討会)。

「最近、体力が衰えてきた」と感じても、気のせいで実際にはそれほどでもないのか、それとも予想以上に衰えているのか、衰えているとしたらどの程度なのかを知っておいたほうが、トレーニングを選びやすくなるからです。

<筋力チェック>
椅子を使い、座り立ちをしてかかった時間を測ると、筋力がどのくらいかが分かります。

「いつまでも動ける体」をキープするために鍛える筋肉は/体力の正体は筋肉の筋力チェックの方法の図

①背筋をのばして椅子に座る
②両手は胸の前で腕組みをする
③ひざが完全にのびるまで立ち上がる
④すばやく椅子に座った姿勢に戻す

呼吸は止めずに、この連続動作①~④を1回分として10回くり返し、トータルで何秒かかったかを測ります。

かかった時間が、下記の表内の性・年齢に該当する時間の「速い」から「普通」の範囲内であれば、あなたの筋力は生活習慣病予防のために目標となるレベルにほぼ達していますし、「遅い」に当てはまれば達していないことが分かります。

「いつまでも動ける体」をキープするために鍛える筋肉は/体力の正体は筋肉の筋力チェックの表

<全身持久力チェック>
自分には「ややきついかなぁ」と感じられる速さで3分間歩いてみて、その距離(m)を測ります。

測った距離が、下記の表の性別・年代別の歩行距離を上回っていれば、あなたの全身持久力は生活習慣病予防のために目標となるレベルにほぼ達していますし、下回っていれば達していないことが分かります。

「いつまでも動ける体」をキープするために鍛える筋肉は/体力の正体は筋肉の性別・年代別の歩行距離の表

では、3分間歩いた距離は、どのように測ったらいいのでしょうか。

最近は、歩行距離が計測できる歩数計が発売されていますので、それを手に入れるのが手っ取り早い方法です。

もし、持っている歩数計にその機能がないか、歩数計そのものを持っていなければ、「ややきつい」と感じる速さで歩いたときの自分の歩幅がどのくらいかをまず測ります。その歩幅に、3分間歩いてカウントした歩数をかければ距離が出ます。

表にある歩行距離は、すべて300m台です。300mという距離がどのくらいなのか。陸上競技場のトラックが1周400m、その約4分の3の距離を3分で歩くわけですが、イメージはつかめるでしょうか。

チェックの結果、あなたの現在の筋力と全身持久力はいかがでしたか。年齢に見合ったレベルでしたか、それとも気のせいではなく、だいぶ衰えてしまっていましたか?

(つづく)

※「体力の正体は筋肉」(樋口満、集英社新書)より抜粋