<体力の正体は筋肉/第5章:下半身と体幹の筋肉をきたえなさい(2)>
有酸素運動とレジスタンス運動
あなたの筋力と全身持久力をふまえて、それではここから、トレーニングの実践に入りましょう。
トレーニングには、大きく分けて有酸素運動とレジスタンス運動の2種類があります。
有酸素運動と呼ばれるのは、呼吸をきちんとしながら、筋肉に継続的に取り込んだ酸素によって、筋肉内のグリコーゲン(糖質)や脂肪を分解して筋肉のエネルギーを生み出すからです。
また、有酸素運動では、内臓脂肪や皮下脂肪として貯えられている中性脂肪(グリセロールというキーホルダーに、脂肪酸というキーが3つつながっている物質)が分解されて血液中に遊離してきた脂肪酸を筋肉が取り込んでエネルギー源として利用します。この作用は、体脂肪を減らすのにとても大切なのです。
ウォーキング、ジョギング、スイミング、サイクリング、エアロビックダンスなどがあり、長時間持続できて、呼吸循環能力もアップして全身持久力を高めてくれます。しかし、筋力を高める効果はそれほど期待できません。
いっぽうのレジスタンス運動は、全身あるいは局所の筋群に強い負荷(レジスタンス)をかけて骨格筋の機能を高めようというものです。
酸素を利用してエネルギーを生み出す割合は、負荷の強度によって異なります。負荷がとても強いと無酸素運動になりますが、負荷が比較的軽いと長時間の持続が可能となり、有酸素運動の役割を果たすことにもなります。無酸素運動とレジスタンス運動が必ずしもイコールではないことは知っておいたほうがいいでしょう。
つまり、レジスタンス運動は筋力トレーニング(以下、筋トレ)のことであり、生み出される筋肉のパワーは大きいのですが、短時間しか持続できません。そのかわり、有酸素運動に比べて筋力を高める効果があります。
どれか1つでOK、自分の体力に合った方法を
本書では、全身持久力を高めてくれる有酸素運動にしても筋力を高めてくれるレジスタンス運動にしても、体に大きな負担をかけることなくすぐにできて、下半身や体幹の筋肉をきたえられるものばかりを紹介しています。
ただし、「あれもこれも、紹介されているすべてのトレーニングをやらなければいけないなんて、とても面倒だ!」と思われたとしたら、それは大きな誤解です。
これらのなかから、自分の体力に合ったもの、毎日必ずできるものを1つでもかまいませんから選んで、それをできるだけ長く続けていただきたいのです。
たくさんご紹介したのは、もしはじめてみて、これは自分に合わないと感じたら、別の方法を選べるように、選択肢を広げたからです。
ただし、いずれもトレーナーの指導なしでできるものですから、自己流になりがちです。誤った方法でされると効果が出ないばかりか、かえって体を痛めてしまう可能性もあります。正しい方法でできているのかをきちんと確認しましょう。 また、トレーニング中にどこかに痛みが出るようなことがあったらすぐに中止してください。無理は絶対にいけません。
(つづく)
※「体力の正体は筋肉」(樋口満、集英社新書)より抜粋