<体力の正体は筋肉/第5章:下半身と体幹の筋肉をきたえなさい(8)>

ストレートに効果が得られる椅子を使った筋トレ

では次に、レジスタンス運動(レジスタンストレーニング)、いわゆる筋トレに移ります。

読んで字のごとく、筋肉そのものに負荷(レジスタンス)を与えて、筋力や筋量を増強するのが目的のトレーニングですから、有酸素運動よりもストレートにその効果が得られます。できるのであれば、この筋トレと有酸素運動を組み合わせて行うのが理想的です。

筋トレでは、必要以上に筋肉や関節に負荷をかけて体に痛みなどの障害が生じないように注意しなければいけません。

筋トレ中は特に血圧が上昇しやすいので、血圧の高い人は避けましょう。そうでない人でも、血圧上昇をできるだけ抑えるようにするには、息を止めない(息をこらえて力を入れない)、軽い負荷がかかる方法を選ぶ、心臓の位置をできるだけ高くするために、横になるより、立つか座るなど上半身を起こした姿勢で行う方法を優先します。

筋トレには、

①自分の体重の一部を使って筋肉に負荷をかけるもの(スクワット、上体起こし、腕立て伏せなどの自重エクササイズ)
②ダンベルやバーベルなどの器具を持って行うもの(フリーウエイトエクササイズ)
③専門的トレーナーの指導のもとでトレーニングマシンを使って行うもの

といった種類がありますが、②や③は、必要な器具を買いそろえたり、ジムに通ったりしなければならず、だれでもすぐにできるわけではありません。

やはり、筋トレを長く続けるには、自宅でも、場合によってはオフィスでも手軽にできることが大きな条件です。

そこで、上半身に比べて衰えやすい体幹や下半身の筋肉群を対象に、おすすめの筋トレメニューを6つ紹介しましょう。すべて椅子に座ったりつかまったりして安定した姿勢ででき、高い効果が得られるものです。

1、つかまりスクワット(きたえる筋肉=太ももの前・後部、体幹、おしり)

スクワットは、ひざの屈伸によって、腰まわりの大腰筋、おしりの大殿筋、太もも前部の大腿四頭筋や後部のハムストリングスをきたえる筋トレです。ひざから上の体重が、これらの筋肉の負荷になっています。

スクワットというと、「ヒンズースクワット」をイメージしがちです。背中を丸めた前傾姿勢で、両腕を前に振り出すようにリズムをとりながらひざを屈伸させますが、股関節を使っていないのでお目当ての筋肉はきたえられず、ひざが大きく前後に動くためにひざを痛めがちです。

スクワットは、慣れないと体がよろけてしまいがちですので、椅子の背やテーブルの端を両手でつかみ、ゆっくり安定した姿勢で行う「つかまりスクワット」がおすすめです。

つかまりスクワットの方法の図

ポイントは次の3つで、これらの方法を必ず守らないと効果は出ません。

①椅子の背やテーブルの端を両手でつかみ、背中が丸まらないように胸を張り、視線は前方に向けます。
②おしりをうしろに引き(骨盤を前傾にして)、椅子に腰かけるのをイメージしながら、ゆっくりひざを曲げます。角度は、太ももと床が平行になる90度ぐらいが理想。
③曲げたひざが、つま先より前方に出過ぎないように意識します。ひざの前後の動きをできるだけ少なくします。

ひざを大きく曲げるほど筋肉への負荷は高まりますが、深くしゃがみこんでしまうと、かえってひざを痛めやすくなります。

はじめたばかりのときは1日に1セット10回は欠かさず行い、1日に行う回数や、1セットに行う回数も無理なく徐々に増やしていきます。

2、太ももアップ(きたえる筋肉=腹部、体幹)

椅子に座って、太ももを上げる筋トレです。腹筋群をはじめ、大腰筋、大腿直筋をきたえるのに向いています。

効果的に行うポイントは、次の3つです。

太ももアップの方法の図

①椅子に深く座り、両手で椅子の座面の端をしっかりつかんで体がぐらつかないようにします。
②おなかの筋肉と太もも前部の筋肉を意識し、大きく呼吸しながら、片方の太ももをできるだけゆっくり持ち上げます。ひざをできるだけ胸に近づけます。
③持ち上げた太ももをゆっくり下ろし、もう片方の太ももを同じように持ち上げます。

1セットの回数は左右の太ももを10~20回ずつ、1日2~3セット行います。

この方法に慣れてきたら、両脚の太ももを同時にゆっくり持ち上げるとより効果がアップしますが、きついと感じたらけっして無理をしないでください。

3、ひざプッシュ(きたえる筋肉=体幹の筋肉)

椅子に座ったままひざを持ち上げ、それを両手で上から押す筋トレで、腹直筋、腸腰筋、大腿直筋をきたえます。

ひざプッシュの方法の図

①椅子に深く座り、背筋をのばします。足の底はしっかり床に着けます。
②両手を重ねて、片方のひざの上に置きます。
③つま先を床につけたままひざをゆっくり上げ、同時に、重ねた両手でひざを地面に向かって押さえつけるようにして5~10秒キープします。このかたちで、片方10回ずつを1セットとして、1日2~3回行います。

(つづく)

※「体力の正体は筋肉」(樋口満、集英社新書)より抜粋