<体力の正体は筋肉/第5章:下半身と体幹の筋肉をきたえなさい(10)>
柔軟性を高めたいならストレッチング
第2章でもふれたように、体の柔軟性は体力と深い関係にあります。
実は、体の柔軟性が高ければ生活習慣病の発症を減らせるかというと、それにつながるエビデンス(科学的根拠)は、今のところ十分ではありません。
しかし、筋肉や腱を一定時間意図的にゆっくりのばすストレッチングを行えば、エネルギーが消費されて筋肉の温度が高まり、関節の可動域が広がり、副交感神経の働きが増えて筋肉が鎮静する、といった効果をもたらすのはたしかです。
運動前のウォーミングアップや運動後のクーリングダウンによくストレッチングが用いられるのは、こうした理由があるからです。
安全に行うためのポイントは、次の5つです。
①のばしたい筋肉を意識して、安定した姿勢で行います。下半身をメインにして、できれば上半身の筋肉もバランスよくのばします。
②弾みをつけないでゆっくり行います。
③強い痛みを感じる寸前ギリギリのところまでのばしたら、その状態を一定時間キープします。そうしないと、効果は出ません。10秒程度からはじめて、少なくとも30秒かそれ以上のばすのが望ましい時間です。
④息を止めずに、自然な呼吸を続けながらリラックスして行います。
⑤まずは、単純な動きのものからはじめます。だれかと柔軟性を競おうとするとついつい無理をしがちなので、マイペースを心がけます。
特に下半身と体幹におすすすめのストレッチングの方法を紹介しましょう。
筋トレもストレッチングも、対象となる筋肉やその強度によってバリエーションはとても豊富です。本書では、そのすべてを紹介しきれませんので、これはぜひ毎日続けていただきたい、下半身や体幹の筋肉を対象にしたものにしぼってみました。
何度もくり返しになりますが、筋トレもストレッチングも、はじめてみて「これはかなりきついな」と感じたら、無理のない強度に下げて行うことをぜひ心がけてください。
「衰えた体力が回復するなら、手段を選ばず」は、絶対にいけません。
“怠け者”の筋肉を急に“働き者”に変えるなんて、そんな虫のいい話はどこにもありません。
しかし、有酸素運動でも筋トレでもストレッチングでも、毎日無理なく続けていれば(ここがポイント!)、筋肉はきっと働き者になってくれるはずです。
結果は、必ず出ます。
(当サイトでは第6章は掲載いたしません。書籍でご確認ください)
※「体力の正体は筋肉」(樋口満、集英社新書)より抜粋